「国家が婚姻を法的に制度化することについて意見を述べなさい」実際に出た大学の入試問題、あなたは解けますか?写真はイメージです Photo:PIXTA

国公立大学の二次試験や総合型選抜入試(旧AO入試)、学校推薦型入試では、課題を発見し解決策を問うような問題、いわゆるディベート型の試験が行われ始めている。これに必要な能力は、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングであるが、鍛える方法はあるのだろうか。本稿は、清水克彦著『2025年大学入試大改革 求められる「学力」をどう身につけるか』(平凡社新書)を一部抜粋・編集したものです。

銀行やコンサルの採用試験で頻出
「この会社を立て直す方法は?」

 近年、横浜銀行など有力地方銀行やコンサルタント系企業の採用試験で、次のような問題が頻出するようになった。

「あなたがアドバイザーだとして、この会社の課題を分析し、経営を再建する方法を考えてください」

 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、対面での面接などを再開した企業が、グループディスカッションのテーマとして出しているものだ。

 経営状態が悪化している中小企業のどこに課題があり、それをどうすれば改善できるのか、というお題は、まさに課題解決型学習そのものだ。

 しかも、グループディスカッションであるため、多様な意見を受け入れ、他の学生と協働して解決策を導き出す能力も測りやすい。

◇この会社の課題を分析し、経営を再建する方法を考えてください
○××商事株式会社 中古トラック販売業(本社・東京都練馬区。同板橋区に支店が1店舗あり。従業員は正規社員23人、非正規社員18人)

○社長は75歳、専務は妻70歳、常務は家族ではない男性55歳、社長の長男40歳は営業課長。社長は現状維持派。常務は新車部門創設など新規事業を考え、支店を増やしたい意向

○年間の売り上げは、コロナ禍前の2019年が10億円、コロナ禍の2020年から2022年は15億円、2023年は8億円となる見通し。借金はないが、本社ビルは築45年。設備投資資金は1億円で、他行が見積もった融資可能額は3億円

 本書を手にされている皆さんは、今、ざっと頭の中でどのような方法を思い浮かべるだろうか。

 すでに学校では、2020年度に改訂された学習指導要領に基づき、小学校から、お金の大切さや買い物の仕組みなどを学ぶ金融教育がスタートし、大学入試を控えた高校では、自分の人生とお金の関わりを学び、資産運用や資産形成について学ぶ機会が担保されるようになっている。

 しかし、それだけでは、この問いに対して、出題者の意図に沿う答えを提示することは難しい。しかも、この手の問題への対策は、学校や予備校での学習だけでは不十分だ。