子どもの教育で重要な家庭での親子の対話。これが、さまざまな能力を育むことは明らかだが、反抗期の子どもと話すことは容易ではない。そんな悩める保護者は、どのように子どもと接したらいいのか。子育てにおける「待つ心構え」と「聞く力」とは。本稿は、清水克彦著『2025年大学入試大改革 求められる「学力」をどう身につけるか』(平凡社新書)を一部抜粋・編集したものです。
反抗期は子どもの成長の副作用
親は嵐が過ぎ去るのを待つ
「子どもとの対話を増やしたくても、反抗期で振り向いてくれない」
講演で質問を受けつけると、しばしば聞かれる言葉である。
そういう場合は、「反抗期=頭が良くなるとき、子どもが成長しようとしているときに起こる副作用」とでも考え達観するしかない。
そもそも「親」という字は「木の上に立ち見る」と書く。
もともと高いところから見ていることしかできないというのが保護者である父親や母親の役割なのだ。
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA、2013年)の著者として知られる坪田信貴氏は、自身が経営する坪田塾のホームページにコラムを掲載し、反抗期について、保護者には「思春期とは『そういうもの』。子どもが順調に成長している証拠」、子ども本人に向けては、「自分で考えて自分の言葉にして、親にその理由を伝えることが大切」と語りかけている。
また、首都圏屈指の進学校、麻布中・高校の平秀明校長は、「子どもに『あなたのことは信頼しているからね』というメッセージを送ることと、生活リズムの乱れだけは正すこと」
この二つを反抗期対策のポイントに挙げている。
肝心の子どもに学びへのスイッチが入らなければ、保護者として気を揉むのは当然だが、受験が近づけば、当事者である子どものほうから動きが出てくる。
「パパ、学校に来た指定校推薦に出してみようと思うんだけど?」
「お母さん、総合型選抜入試で受験したい」
財布の紐を握っているのは保護者なので、早いか遅いかの違いはあっても必ずアクションを起こしてくるのを気長に待ってほしい。「親」という漢字に立ち返るなら、木の上から嵐が過ぎ去るのを待つ感覚でいいのではないだろうか。
嵐が過ぎるのを待てない人には
試してもらいたい「リフレーミング」
ここで注意したいのが、最近の子どもの中には、反抗期らしい反抗期がない割に、保護者に本音を語ろうとしない子が増えてきたことだ。
取材を重ねていると、保護者が、子どもを転ばせないよう先回りをしてきた家庭が増加したこと、そして、子ども部屋にパソコンとテレビ、スマートフォンが完備され、関心を寄せる対象が親ではなくなってきたことなどが背景にあるようだ。