MARCHクラスの受験生でも早慶を狙える!「下剋上入試」「ファストパスチケット」を使わなきゃ損なワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

大学入試への知識が不足している学生や保護者、そして教師は意外に多い。特に地方であれば、都内私立大学の入試方法などの情報量は少なくなりがちだ。しかし、入試方法によっては、実力以上の学校に合格する「下克上」を果たせるという。本稿は、清水克彦著『2025年大学入試大改革 求められる「学力」をどう身につけるか』(平凡社新書)を一部抜粋・編集したものです。

大学入試に関する情報量が
相対的に不足している地方

 筆者が講演で地方の高校にお邪魔した際、高校生たちに質問することがある。

「みんな、英検って何級を持ってる?総合型選抜入試って聞いたことある?」

 地方でも、進学校と呼ばれる高校では、「英検2級に挑戦中です」とか「総合型?名前は聞いたことがあります」といった答えが返ってくるのだが、東京や神奈川の高校生に比べれば、反応が鈍い印象は拭えない。

 ひと言で言えば、首都圏や関西圏の高校生と比べ、地方の高校生は、大学入試に関する情報量が相対的に不足しているのだ。

「灘高にいると、たとえば『頑張っても大阪大学あたりまで』という高校生でも、『東京大学合格』まで学力をアップさせる機会を得やすい。それが灘高の魅力」

 こう語るのは、兵庫の灘高から東京大学理科三類に合格した精神科医で、「受験の神様」とも称される和田秀樹氏だ。

「高校生たちが求めている問いに、いつでも向き合い、答えられる教員と情報を私たちは持っているつもりです」と語るのは、東京屈指の進学校、開成中学校・高等学校で校長を務め、現在は北鎌倉女子学園の学園長を務めている柳沢幸雄氏である。

 2人に共通するのが、「情報量」だ。

 地方の高校生には、大学入試に関する情報量が少ない。英検2級や準1級を取得しておくと、どれほど入試で有利に働くかとか、総合型選抜入試なら、どのあたりまで下剋上が可能なのかとか、高校教員に教わらない限り、知る術がない。

下剋上が可能な総合型選抜入試
工夫次第で地域格差は埋められる

 加えて、ロールモデルの不足という問題もある。

「東京大学を目指そう」と考えたとしても、「2つ上の先輩が東大」といった事例がないため、どうすれば手が届くのか掴みにくい。

 情報の不足は、直接的に、目指す大学の選択肢を狭めることにつながる。その不足分を家庭の総合力で補ってほしいと思うのである。

 それでもまだ、一般入試であれば、目に見える成績をアップさせればいいので、対策が立てやすい。学校推薦型選抜入試や指定校推薦入試も、大都市圏と地方とでは差が出にくい。

 しかし、うまく利用すれば下剋上が可能な総合型選抜入試は、体験の多寡がそのまま志望理由書や活動報告書に反映されてしまう。

 筆者よりはるかにベテランの予備校講師は言う。

「たとえば、政治や経済にリアルに触れる機会が少ない、海外旅行の経験がない、話題の場所を見る機会も少ない地方の高校生は、気づきを得る体験が乏しくなります。志望理由書に書く材料がないということになりかねません」