貴族にかわいがられ江戸時代には家族の一員に

 世界的にみると、収穫した農産物をネズミから守るために飼われ始めたのが、イエネコの起源とされている。日本に入ってきたイエネコについても、弥生時代に来ていたのならば、同様の理由からだと考えられる。飛鳥時代から平安時代にかけて、遣隋使や遣唐使が運んでくる仏教の書物がネズミに食い荒らされるのを防ぐために、船にネコを乗せたともいわれている。そして、平安時代には貴族の愛玩動物として飼われるようになり、珍重された。江戸時代になると、墓に埋葬されたイエネコの骨が見つかっており、家族の一員のように暮らしていたネコがいたこともわかっている。そんなイエネコの来歴について、松本さんはこんな事実も紹介してくれた。

ネコの“祖先”はいつ日本にやってきた?「ゲノム解析」で日本のネコの来歴が判明『ジュニアエラ 2024年 4月号』
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(朝日新聞出版)

「今回の研究とは離れますが、日本のイエネコはアジアの集団にヨーロッパの集団が混血していることがわかっています。最初にアジアのネコが来て、その後、シルクロードを伝ってヨーロッパのイエネコが入ってきたのでしょう。その時期はよくわかっていませんが、比較的早い時期だったと思われます」

 ペットのネコにも、先祖代々にわたる長く、波乱に富んだ歴史があった。そう考えると、身近なネコがさらにいとおしい存在に見えてくる。

(文/上浪春海)

AERA dot.より転載