ゲノム解析が示した答えは「平安時代」

 人や動物の血液や骨などからDNAを取り出し、そこに残されているすべての情報を詳しく調べる「ゲノム解析」から、人や動物がいつごろどこで現れ、どのように広まっていったかを推定することができる。遺伝学者の松本悠貴さん(アニコム先進医療研究所・麻布大学)は、この方法を日本のイエネコにも応用して、来歴の謎解きを一歩進める研究成果を発表した。

 松本さんは、獣医師から血液をもらうなどして日本全国から72匹のイエネコのDNAを集めた。このほかに韓国・中国などからイエネコのDNAデータも入手した。さらに、古代のネコの骨からもDNAを取り出して、これらすべてのゲノム解析を行った。その結果、次のようなことが明らかになったという。

「日本のイエネコは、中国の集団から分かれて入ってきて、最初、九州・沖縄集団が渡来していたことがわかりました。九州以北では約900年前の平安時代にまとまった頭数が入ってきています。弥生時代や古墳時代に来ていたとしても数は限られ、現代のイエネコにつながる祖先とはいえないようです。その後、鎌倉時代になって関西・中部・関東などでも数が増え始め、江戸時代になると増え方が大きくなっていきました。東北北部や北海道へは、他の地域より遅れて広まっていったことが示されました。この結果は、書物などが示す従来の説に近いといえそうですね」