健康的な体づくりには適度な運動をすることが望ましいが、いくら筋トレや有酸素運動をしたとしても、体脂肪を減らす効果はあまり期待できないという。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士が、合理的にダイエットを進めるための基礎知識を伝授する。※本稿は、清水 忍『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。
人体の余剰エネルギーは
脂肪としてストックされていく
合理的に効率よくダイエットを進めていくには、体脂肪というターゲットがどんな相手なのかを知っておかなくてはなりません。「なぜ」を追求するロジカルダイエットでは、ターゲットである体脂肪の特徴を知り、「なぜ、体に脂肪がついたり落ちたりするのか」を分かっていることがとても重要なのです。そこで、「脂肪がたまるメカニズム/脂肪が減るメカニズム」をここで簡単に整理しておくことにしましょう。
そもそも、人間には、万が一食べられなくなったときのための備蓄エネルギーが必要です。体内に蓄えられるエネルギーは「糖質」か「脂肪」のどちらかなのですが、もともと糖質はほんのちょっとしか蓄えられません。糖質はグリコーゲンというかたちで肝臓や筋肉にストックされるものの、わずか400gほどしか蓄えられず、ちょっと運動でもすればすぐになくなってしまいます。
一方、脂肪は貯蔵に向いたエネルギーです。糖質1gが4kcalなのに対し脂肪は1gで9kcalもあり、大容量のエネルギーを出すことができるうえ、コンパクトに収納できていくらでも蓄えることができます。そのため、人の体はちょっとでも余剰エネルギーがあれば、どんどん脂肪に変換して体内にストックしようとします。すなわち、体内にグリコーゲンとしてためられる容量を超えた糖質が入ってくると、それらをどんどん脂肪に変換して貯蔵しようというメカニズムが働くわけです。
飢えや寒さをしのぐための
生存システムが裏目に出た
つまり、ごはん、パン、麺類、お菓子、果物、ジュースなどの糖質を普段からたくさん摂っていると、それらがどんどん脂肪に変換されてエネルギー貯蔵庫へ回されていくことになるのです。
このエネルギー貯蔵庫は体中いたるところにあり、肝臓の細胞にたまれば脂肪肝が進み、内臓の周りにたまれば内臓脂肪が増加し、おなかや太もも、お尻などの皮下にたまれば皮下脂肪となっていきます。
そして、こうした脂肪が増えてくると、脂肪をためこむ細胞のひとつひとつが、まるで水風船がふくらむように膨張していくのです。こうした脂肪細胞の膨張こそが肥満の正体だと言っていいでしょう。
ですから、「なぜ、脂肪がたまるのか」をひと言で言ってしまえば「エネルギーの摂りすぎ」ということになります。
私たち人間が太古の昔から飢えや寒さをしのいで過酷な環境を生き延びてこられたのは、この脂肪を蓄積するエネルギー貯蔵システムがあったおかげだと言っても過言ではありません。しかし、飽食の現代においては、この優れたエネルギー貯蔵システムがあったことが裏目に出て、健康面や美容面でさまざまな問題を引き起こしているということになります。