シニアのビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

40代にとって、還暦というとまだまだ先のことに思えるかもしれない。だが、魅力ある60歳を迎えられるかどうかは、40代の過ごし方が鍵を握る。40代から始める還暦への準備と心構えを齋藤孝氏が解説する。※本稿は、齋藤孝著『最強の60歳指南書』(祥伝社新書)を一部抜粋・編集したものです。

明治時代とは異なる今の60歳に
威厳と風格がないワケ

 干支は「十二支」と「十干」の組み合わせから成り、60年でそのサイクルが一巡します。自分が生まれた「元の干支に還る」のが数えで61年目。満年齢で60歳、これすなわち還暦ということになります。

 還暦を迎えるということは、言わば一回りして新しく生まれ変わるということです。一方で、60歳という年齢の持つ社会的な意味は、その時代によって変わってきます。江戸時代や明治の60歳と、令和の60歳は同じではないということです。

 織田信長が幸若舞『敦盛』の一節「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり」と唄ったとおり、戦国時代では人の一生はおよそ50年くらいという認識だったようです。

 翻って現代は、「人生百年時代」という言葉も聞かれます。厚生労働省によると、日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳(2022年「簡易生命表」より)です。人生をざっくり90年と考えれば、60歳は人生の3分の2を終えたということ。これからまだ3分の1の長い時間が残されているのです。80年としても4分の1あります。

 実際、現代の60歳は総じて見た目が若く、明治時代の威風堂々とした大父のモノクロ写真などと見比べても、同じ還暦とはいえ、趣はだいぶ違います。夏目漱石は享年49ですが、髭を蓄えた泰然たる面持ちの写真を見るにつけ、令和の50代や60代とは比較にならない威厳と風格が伝わってきます。

 令和の中高年世代が、ともすると明治の人より軽く見えてしまうのは、見た目が若いだけでなく、知識と教養が必ずしも明治人に追いついていないからと指摘する声もあります。

80年代からあった「活字離れ」
良書を読んだ自信はあるか

 一般に「若い人は本を読まない」といわれますが、じつは今の60代の人が20代だった1980年代頃から、「若者の活字離れ」は既に社会問題として指摘されていました。