現在60歳前後の方で、「自分は骨太な良書をたくさん読んできた」と言い切れる人がどのくらいいるでしょう。「じつは本なんてあまり読んでこなかった」という方のほうが数としては多い、ということはないでしょうか。

 残り30年という長めのラストスパートへ向けて、「何かおもしろいことをもう1つか2つくらいしてみるか」と、現実的に考えられる現代の60歳。この人生の節目を前向きな気持ちで迎えられるかどうかで、残りの30年の行く末は変わってきます。つまり、40代や50代のうちに、還暦へ向けてどのような準備をしておくかが、この上なく大切になってくるわけです。

 智慧と教養を備えた魅力ある60歳へ向けて、壮年時代からどのような習慣を普段の生活の中で身につけていけばよいのか。

 昌平坂学問所の儒官を務めた儒学者の佐藤一斎は『言志四録』の中で、「少にして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず」との言葉を残しました。

 若いときから学べば壮年になって事をなすことがある、壮年になっても学びを続ければ、年を重ねても衰えることがない。老年になっても学びをやめなければ、死んだあとも自分のしてきたことは朽ちずに、次へと引き継がれていく。

 すなわち、人は一生をかけて学び続けるということです。まさに40代から60代のすべての人が傾聴すべき言葉といえるでしょう。

習慣をフォーマット化して
「めんどくさい」をなくす

 生活習慣とは、言い換えれば自分用の生活フォーマットをつくり、そこへ日々の思考や行動を落とし込むということです。「暮らしのフォーマット化」こそが習慣です。朝起きてご飯を食べ、歯を磨いて電車で通勤するという一連の行為は、その人の習慣でありフォーマットです。

 フォーマットを武道の「型」に置き換えてもいいでしょう。私は空手をしていたことがありますが、空手では最初に「型」を徹底的に教わります。空手の正確な動作を身につけるのに「型」の習得は不可欠です。これをしっかりと覚えることで、初めて実戦でも突きや蹴りなどを正しいフォームで打ち込むことができます。