2日の休息日を挟んで23日間で3500kmを走り抜けるツール・ド・フランスの選手たち。連日のレースに備えて、彼らはレース後や休息日をどのように過ごしているのだろうか。ツール・ド・フランスから学ぶ「明日のパフォーマンスを高める休み方」とは――。(取材・文/スポーツジャーナリスト 山口和幸)
・数cm差を制したのは?ビンゲゴー vs ポガチャル
・アフリカ出身のギルマイの快進撃!ツールの歴史に名を残すか
・フランスのよさを満喫できる宿泊体験「オーベルジュ」とは?
・ツール・ド・フランスと東海道五十三次に意外な共通点あり
・フランスの労働者に課せられた“羨ましすぎる義務”
・サイクルロードレーサー新城幸也が明かす「休まぬ休息日」の過ごし方
数cm差の激闘!
ポガチャルvsビンゲゴー
ツール・ド・フランスは第11ステージのコース後半、第12ステージの前半で、フランス第3の山岳地帯、中央山塊(マッシフサントラル)に突入した。
第11ステージでは首位のマイヨジョーヌを着るUAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が単独アタック。これに反応したのが3連覇に挑むビスマ・リースアバイクのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)。2人でゴールを目指すことを専門用語で「ランデブー」と呼ぶが、この宿命のライバルは一時的な共同戦線を張り、最後はゴール勝負でビンゲゴーが数cm差で勝利した。
第12ステージはエリトリアのビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)が第3、8ステージに続く今大会3勝目を挙げた。キング・オブ・スプリンターの称号であるポイント賞では2位に差をつけてトップ。アフリカの黒人選手としてこの大会でこれまでにない実績を積み上げている。
中央山塊とはうまい日本語訳だなと感心するばかりだが、フランスの中央部にある高地だ。フランスに現存する古文書にこのあたりの山が噴火したという記述はないそうだが、そのもっと前には噴火を繰り返し、奇岩が林立する独特の景観を成形していったようだ。火山活動で隆起した山々と深い谷があり、その源流は360度にわたって放射的に流れ、フランスのほぼ全土に水を供給する。
標高の高いところは1000m以上あり、それが一つひとつの渓谷に下っては上る。高速で走行できる有料高速や自動車専用国道も少ないので、峠道の連続。第11ステージの移動は250kmもそんな山道が続き、本当に疲れた。
フランス人が愛する夏の聖地
中央山塊のオーベルジュ体験
山があり川や湖もある。自然公園が11もあるので夏休みをここで過ごすフランス人は多い。学生たちは林間学校のような宿舎、家族はオーベルジュ(旅籠)というタイプの個人経営の宿泊施設がお気に入りだ。オーベルジュには必ず地元食材を使ったレストランが併設され、予約した宿を訪ねたら、たまたまミシュランの星付きなんてことは何十回もある。
宿泊者なので予約もいらないし、ワインを飲んでも歩いて部屋に戻るだけだ。日本人旅行者はパリやモンサンミッシェル、アルプスや地中海を訪ねがちだが、本当にフランスの気持ちよさを満喫したいならボクは中央山塊のオーベルジュをイチオシしたい。