劇的な幕開けとなったツール・ド・フランス2024の第1ステージ。初日から大金星だった。33歳、ベテランが見せた意地の走りに胸を打たれた。明日からの仕事も頑張れそうな気がしてきた……。コラムでは、ツール・ド・フランスの開催地がなぜイタリアなのか。そこには、巨大な国際スポーツ大会どうしの駆け引きと大会主催者たちの“したたかな戦略”が隠されていました。(文/スポーツジャーナリスト 山口和幸)
“ツール・ド・フランス”は日本の“甲子園”と同じ?
6月29日、ツール・ド・フランスの第111回大会が始まった。初日はイタリアのフィレンツェからリミニまでの206kmで、DSMフィルメニッヒ・ポストNLのロマン・バルデ(フランス)が7年ぶり4度目のステージ優勝。総合成績でも1位となり、首位のリーダージャージ、マイヨジョーヌを獲得した。
ツール・ド・フランス。ツール(tour)は一周という意味の名詞なので、日本語に直訳すると「フランス一周」となる。どこにも自転車レースという言葉は入っていないが、正式な大会名には le Tour de France と定冠詞(英語の the にあたる)・男性形の「le」がつけられていて、これこそ世界最大の自転車レースなのだと主張している。実際に、フランス人に聞けばツール・ド・フランスは、真夏の自転車レースだとわかる。日本でも「甲子園」といえば、高校野球の全国大会であることが伝わるのと同じだ。
フランス一周レースなのに2024年はどうしてイタリアで開幕したのか? そんな疑問を持つ人も多いと思うが、これまでもツール・ド・フランスは周期的にフランス国外を大会のスタート地点に設定してきた。それには彼らの“したたかな”戦略があるのだ。