視聴者数35億人!? 「ツール・ド・フランス」全21ステージを現地レポート!個人タイムトライアル (c)A.S.O. Charly Lopez

世界三大スポーツイベントと言えば? 五輪とワールドカップと……そう、ツール・ド・フランスだ。今夏、五輪とツールが立て続けに開催されるフランスは、間違いなく「地球上で最もアツい国」となる。6月29日から7月21日にかけて全21ステージ、総距離およそ3500kmを走破する「世界最大の自転車レース」を全日同行取材で現地からレポートしていく。現地レポートには、フランスの歴史や文化だけでなく「パリ五輪直近情勢」や「円安下の海外旅行」といった社会・経済情報まで幅広くお届けする。(文/スポーツジャーナリスト 山口和幸)

【目次】
なぜツール・ド・フランスは世界中で人気なのか?
111年の歴史で初!今年のツールの見どころ
数字で見るツール・ド・フランス、優勝賞金は?視聴者数は?
レース結果と現地情報のレポート(全12回)※詳細は記事末に記載


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なぜツール・ド・フランスは世界中で人気なのか?

 五輪、サッカーW杯とともに世界三大スポーツイベントの一角を占めるツール・ド・フランス。真夏のフランスを23日間かけて一周する世界最大の自転車レースだ。

2024年大会の総距離は約3500km。23.5kmと33.7kmの個人タイムトライアルがあり、それ以外の通常ステージは平均すると約180km。今回は欧州で最も高い舗装道路のボネット峠(標高2802m)がコースに含まれていて、バーチカルゲイン(累積獲得標高)は5万2230mというから恐ろしい!

視聴者数35億人!? 「ツール・ド・フランス」全21ステージを現地レポート!2024年のコース (c)A.S.O.

 出場するのは8人編成の22チーム、合計176人のプロ選手。毎日フルマラソンと同程度の高い運動量をこなし、それを23日続ける。

 なぜ自転車選手がここまで過酷な激しいレースを継続できるのかと言えば、自転車が見事なまでに効率よく、体にストレスを与えない移動手段であるからにほかならない。

 各チームが自転車の研究開発にも注力していて、それらを見比べるのもレースの面白さの一つだろう。

参考記事:パリ五輪代表の自転車は1985万円!東レ開発の“非常識マシン”が採用した「左側チェーン」の革命度

 ツール・ド・フランスは、ロードバイクと呼ばれる変速機付きの超軽量自転車を使った公道レースだ。陸上競技のマラソンと同様に、選手全員が一緒にスタートし、フィニッシュまでのタイムを計測する。

 全21ステージにおける各選手の所要時間を累計し、最も早いタイムで走破した選手が個人総合優勝となり、表彰台で黄色いリーダージャージ「マイヨジョーヌ」を着用する。8人のメンバーがチームの「エース」にマイヨジョーヌを着せるために団結する。そこに、ライバルチームとの駆け引きなどが発生し、レースの面白さは重層的になる

視聴者数35億人!? 「ツール・ド・フランス」全21ステージを現地レポート!町から町へと駆け巡る (c) A.S.O. Pauline Ballet

 もう一つ、ツール・ド・フランスが世界最大の自転車レースとなったのには理由がある。日本の約1.5倍の国土を持つフランスには随所に大自然や建造物の世界遺産があり、巡礼のように各地を旅する魅力があれていることが挙げられる。

 そして、開催時期がバカンスと重なるので、優雅な長期休暇を利用して沿道に繰り出したり、あるいは運よく我が家の前をレースが通過することもあり、家族や社会全体で楽しめるからだ。つまり箱根駅伝のようにいい時期にやるからである。実はツール・ド・フランスの総観客数は1500万人もいる言われており、全スポーツイベントの中で世界最多なのもこうした事情を反映しているのだろう。

111年の歴史で初!今年のツールの見どころ

 過酷なアルプスやピレネーの山脈を越えて、いつもなら花の都パリを目指す…。が、第111回大会となる2024年は史上初めてパリに凱旋しないという前代未聞のコースが特徴だ。イタリアで開幕するのも初のことで、地中海沿岸のニースに終着するのも初めて……何かと異例づくしの大会となった。

視聴者数35億人!? 「ツール・ド・フランス」全21ステージを現地レポート!勝負どころのアルプス山脈 (c)A.S.O.

 ツールの象徴と言える「最終日のパリ」の歴史が途絶えてしまったのは、ツール最終日の5日後に開催されるパリ五輪が関係している。

 実は、すでにパリのコンコルド広場は新種目ブレイキンやBMXの会場が設置され、ツール・ド・フランスが例年のように広場を走る余地はない。そのためツール・ド・フランスが舞台を五輪に譲ったのである。

数字で見るツール・ド・フランス、優勝賞金は?視聴者数は?

 2024年の賞金総額は230万ユーロ(約4億円)。個人総合優勝賞金は50万ユーロ(約8700万円)だが、マイヨジョーヌ着用やステージ優勝などにも賞金が提供されるので総合優勝者の獲得した金額は当然それ以上になる。

 ただし自転車レースは8人のチームプレーで栄冠を目指すスポーツなので、エースを勝たせるためにアシスト選手は自らの成績を犠牲にしてサポートする。そのため、チームが獲得したすべての賞金をチーム内で均等に配分するのが習わし。例えば優勝した選手が所属するチームの獲得賞金総額が1億円として、8人に均等割りしたら1人1250万円、大会は23日間なので日当は54万円。テニスやゴルフよりも圧倒的に見劣りする、というのが正直な感想だ。

視聴者数35億人!? 「ツール・ド・フランス」全21ステージを現地レポート!(c) A.S.O. Pauline Ballet 無断転載を禁止します。

 ツール・ド・フランス記事を担当する私としては26回目の全日程取材。現地から発信するレポートにはその文化・伝統や経済との密接な関わりに加えて、パリ五輪直近情勢、円安下の海外旅行についても紹介していく予定だ。また、ツール・ド・フランス優勝者らが11月2日に来日して開催される「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」のサキドリ情報などもお送りしていきたい。

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