胡友平さんに「見義勇為模範」の称号が贈られるも
事件の真相は今も闇の中
今回の蘇州でも容疑者は拘束されたものの、当局は事件の動機やその経過など詳細を一切公表していない。そんな中で、人々は「彼女は自分の生命を賭して、他の子どもたちに凶行が及ぶのを防いだ英雄だ」と、当局にその「英雄」の氏名を公表するように要求したのだった。
当局は彼女の死後やっと、その氏名と顔写真を公開した。しかし、その直後には政府系メディアが「胡さんの家族はそっとしておいてくれと求めている」と報道。さらに続けて「彼女の葬儀は親族の間ですでに行われた」と伝えた。
当局は社会が胡さんの遺族と接触し、事件に関する情報が拡散するのを恐れ、情報の流通を遮断する措置を取った。一方で、その英雄的行為に対して彼女とその家族をねぎらうべきだとの声に応えたかのように、蘇州市公安局は胡さんに「見義勇為模範」(正義と勇気の模範)という称号を送った。
ネットでは、いや「模範」では足りない、彼女は生命をかけて子どもたちを、さらには我われのメンツを守ったのだから「英雄」に付されるべきだという声も起きた。いやいや、蘇州市のレベルではなく、江蘇省レベル、さらには国レベルでの称号がふさわしいという意見もでたが、この「見義勇為模範」の授与は同時に、当局による事件への終止符だった。その後、当局による事件に関する発表は止み、メディアの後続報道も、またネット上での討論もほぼ停止してしまった。
そして、いまだに容疑者の動機など、詳細はまったく分からないままとなっている。