スタイリッシュで上品
存在自体が素敵

 メルセデスの最新モデルらしく、機能面は充実している。学習能力を高めた第3世代のMBUXは実に便利だ。あらかじめ設定しておくと一定の条件を満たしたときに作動するルーティン機能、設定を予測提案する機能、より簡単に音声対話できるジャストトーク機能により、ドライバーや乗員の操作負担を軽減してくれる。

 足回りはスポーツサスペンションが標準となり、オプションのドライバーズパッケージ(40万円)を装着すると、標準で19インチのタイヤ&ホイールが20インチとなるほか、連続可変ダンピングシステムを備えたダイナミック・ボディコントロール・サスペンションやリアアクスルステアリングが装備され、ダイレクトステアリングのギアレシオがクイックな設定になる。

 走り出して感心した点は、予想よりも乗り心地がずっといいことだ。低偏平な20インチタイヤを履くとは思えないほど路面にしなやかに追従し、突き上げを感じさせない。

 しかもクルマの動きが極めて素直で、まさしく意のままに操れる感覚がある。操舵に対する応答遅れはもちろん、どこにも動きにカドを感じない。挙動を乱すことなくイメージしたラインを正確にトレースしていける。

 巧みなサスペンションチューニングと完成度の高い後輪操舵の組み合わせで、俊敏ながら落ち着いた安定した走りを実現している。これなら助手席に大切なゲストを迎えて快適なドライブを満喫できる。

 従来のBSGに替えてISGを搭載したパワートレーンは、1.8トン級の車体を軽やかに加速させてくれる。とはいえエンジンの選択肢が4気筒に限られる点は、このクラスのプレミアムクーペを求めるユーザーにとってどう映るか気になるところではある。ゆくゆくAMGモデルが追加されればつじつまがあうのだろう。

 CLEは、このところクーペがめっきり少数派になってきた中に現れた、すべてを身につけたメルセデスのニューカマーである。スタイリッシュで上品。存在自体が素敵だ。なぜあえて自動車メーカーは伝統的にクーペを手がけ、ユーザーはクーペを選ぶのか、その答えの一端がうかがえた。

(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一朗 写真/山上博也)

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