ここではウェアラブルデバイスのデータを用いて、2万2000人以上の「非運動者」の毎日の活動量を追跡。研究者らはその後、このグループの臨床健康記録を7年近く追跡して、がんの発生を監視したということ。この研究で研究者たちは、階段を駆け上がるといった息切れするような約60秒間の運動を指す、「VILPA(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity)」という造語を用い、「日常生活での断続的な激しい運動の健康効果」を測定する最初の試みの一つとなった。
そこでの運動方法は、われわれの生活の中にも計画的に取り入れることができるはずだ。公園やエアバイクで20秒間のスプリント(短距離をすばやく走る動作)を行い、その後、60秒間のリカバリーを行うという方法もある。あるいは、ジャンプスクワット、スラスター(スクワットと頭上へのプッシュプレスを組み合わせたトレーニング)、バーピーなど、肺を酷使する動きを次のセッションで組み込んでもいいだろう。速く、激しく行って、そして、なるべく早く家に帰ることにしよう。
がんのリスクを減らす効果が期待される
3つの手っ取り早い方法
◇飲酒習慣の変更
2015年2月、アメリカ国立医学図書館のウェブサイトに掲載された、ミラノ・ビコッカ大学統計・計量法学科のヴィンチェンツォ・バンナルディ教授らによるレポ―トによれば、「48万6538例のがん症例を含む合計572件の研究から、非飲酒者および時折飲酒者と比較した多量飲酒者の相対リスクを換算するとアルコール摂取は明らかにがんの発生率を上げている数値を示している」と報告*5されている。
また2023年8月に、患者や家族が健康に関する意思決定を行うのを支援するための、がん疫学分野の研究に特化した査読付きの医学雑誌『Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention』に掲載されたエレオノーラ・テプリーンスキー医学博士のブログ*6によれば、「米国癌協会(ACS)によれば、米国では診断されたがんの約6%、がんによる死亡の約4%をアルコール摂取が占めている。
しかし、アルコールの使用は私たちが変えることのできるがんの危険因子のひとつでもあるのだ」とつづっている。彼女はニューヨークにあるバレー・マウント・サイナイ総合がんセンターの乳腺・婦人科腫瘍内科部長であり、マウントサイナイ医科大学の臨床助教授でもある。
さらにアメリカ国立がん研究所のサイトには食道がんに関して、「そのリスクはアルコールを摂取しない場合と比較して、軽い飲酒で1.3倍、大量飲酒で5倍近く高くなる。さらにアルコールを代謝する酵素の欠損を受け継ぐ人は、アルコールを摂取すると食道扁平上皮がんのリスクが大幅に上昇することが判明した」と報告*7されている。