EVアンチが指摘する「ガソリン車よりトラブル多い」って本当?JAFの調査で分かった実情Photo:PIXTA

いわゆる「脱炭素」の切り札として、電気自動車が注目されてから数年がたった。だが充電に時間がかかることなどから、電動車に「あまりいい印象がない」という層もみられる。中には「ガソリン車よりも故障などのトラブルが多い」と考えている人もいるようだ。この説はどの程度正しいのか。ロードサービスでおなじみの「JAF」の調査結果などをもとに、実態を読み解いていく。(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)

EVは「トラブル多い」
「JAFの迷惑」って本当?

 2023年の国内におけるBEV(バッテリー式電気自動車)の販売実績は、クルマ全体の販売台数の約2.2%を占め、前年の約1.7%から0.5ポイント増となった。日産の軽BEV「サクラ」がヒットした影響などでBEVユーザーは少しずつ増えているものの、まだまだ少数派なのが現状だ。

 BEVの普及を阻んでいる最大の要因は、やはり「充電に時間がかかること」だろう。自宅に充電設備があれば別だが、そうでないユーザーは街中(まちなか)の急速充電設備を利用することになる。だが、5分もあれば燃料を満タンにできるガソリン車/ハイブリッド車と違い、BEVへの急速充電は最大30分を要する。

 自車への充電だけで済めば30分待つだけでよいが、先客がいれば「台数×30分」待たなければならない。この「充電待ち」もBEVの大きなデメリットだ。

 その上、急速ではない「普通充電」の場合は、長ければ10時間ほどかかることもある。こうした充電関連の他にも「航続距離が物足りない」「価格が高い」といった課題があることから、昨今はBEVの「否定派」も多いようだ。

 筆者はガソリン車/ハイブリッド車/BEVのそれぞれに良し悪しがあると考えているが、情報収集を兼ねて「BEV否定派」の意見に目を通すこともある。その中で、実は先日、興味深い記事やコメントをいくつか見かけた。内容を要約すると、次のようなものだった。

「BEVはガソリン車よりも、故障などのトラブルが多い」
「BEVのトラブル処理は大変なので、JAF(日本自動車連盟)のスタッフの迷惑になっているようだ」

 確かに、路上で電動車特有の故障などが多発しているようであれば、それらに対応するJAFのスタッフの負担も増大していると考えられる。では、実際はどうなのか。今回は、JAFがまとめた調査結果や関係者への取材内容をもとに、「BEVに特有のトラブル」の実態をひもといていきたい。