性行為中に避妊具を「同意なく」外しても、日本では性犯罪にならない厄介な理由【弁護士が解説】写真はイメージです(Graphs / PIXTA)
*本記事は弁護士ドットコムニュースからの転載です。

 性行為中に女性が気づかぬうちにコンドームを外したという男性が、裁判所で有罪判決を受けたというイギリスでの事件が報じられ、先月話題になった。

 AFPBB Newsなどの報道によると、女性は男性との性行為について、コンドームの使用を条件に同意していたようだ。性行為中に相手の同意を得ずにコンドームを外す「ステルシング」は、イングランドとウェールズでレイプに分類されているという。男性は禁錮4年3月の判決を言い渡された。

 ステルシングは、望まない妊娠や性感染症に感染するリスクを高めるおそれがあり、被害者にとっては許しがたいものだろう。もし日本でステルシングが行われた場合、今回のケースと同様に「性犯罪」となるのだろうか。不同意性交等罪の要件の1つに、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」との規定もあるがどうか。

 刑事事件に詳しい坂野真一弁護士は「ステルシングは、現在の刑法の下では、不同意性交等罪として処罰することはできないと考えられます」と話す。その理由について、詳しく解説してもらった。

「性的行為そのものについては同意ある」ステルシングのやっかいな点

 性交の際に避妊具の装着について誤信を生じさせることを、いわゆる「ステルシング」と呼び、海外では刑事処罰の対象とされている国もあるようです。

 2023年の刑法改正で、「不同意性交等罪」(刑法177条)が規定されたことから、日本でステルシング(避妊具の装着について誤信を生じさせ性交に及ぶ行為)が行われた場合、不同意性交等罪に該当し、刑法で処罰されるかという問題として考慮します。

 ステルシングについて、法務省ホームページの刑法改正の概要欄でも特段解説はされていないようですし、今回の刑法改正についての同省HPのQ&Aにも解説は見当たりませんでした。以下は、あくまで私の見解であることをご了承ください。