たとえ交際していても、ハグやキスを含めた「性的行為」には、お互いにその行為を望んでいるかを確認する「性的同意」が必要となる。また、2023年の刑法改正により、「性交同意年齢」がそれまでの13歳から16歳に引き上げられた。これにより、たとえば20歳以上の大人が16歳未満の人と性交した場合は、同意の有無にかかわらず処罰の対象となる。子どもたちを被害者にも、加害者にもしないために、親もしっかり学んでおきたい。本稿は、大森美佐『恋愛ってなんだろう?(中学生の質問箱)』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
手を繋ぐ、ハグ、キス……
「性的な行為」には同意が必要
恋愛にまつわるコミュニケーションを考えるうえで、みなさんにぜひ知っておいてほしいことがあります。それが、「性的同意」という言葉です。
――とつぜんキスしたり、手をつないだりするのはダメって話だよね。
そうですね。性的同意とは、性的な行為をするときに相手に「YES」と同意を得ることです。性的行為=セックスだと思っている人も多いのですが、それだけではありません。手をつないだり、キスをしたり、ハグをしたり、そうした「触れ合う行為」すべてを性的な行為と言います。また、性行動だけではなく、性的な話をすることも含まれます。そうした、性にまつわることについて、お付き合いをしている相手の意志を確認して同意を得ることを「性的同意」と言います。たとえば、付き合ったら、いつでもどこでもキスをしてもいいのでしょうか?
――たしかに突然キスされたらびっくりするかも。
そう、突然されたら驚きますよね。「相手もそうしてほしいはずだから」という理由で、相手の許可なく行動することは、相手を傷つけるかもしれない、危険なことです。
――お互い大好きで付き合っていても、同意が必要ってこと?
はい。付き合っていれば手をつないだりキスをしたりして当然だと考えてしまっている人は多いのですが、そうではありません。みなさんに知っておいてほしいのは、自分の心や身体は「自分自身に属しているもの」で、他人が勝手に侵してはいけないということ。つまり、自分の心と身体について決める権利を、すべての人がもっていて、本人の意志がいちばん大切だということです。たとえ結婚していても、恋人関係にあったとしても同意が必要です。同意を得ずに、本人が望んでいないことを強要することは、その人の権利を踏みにじることになってしまいます。
――自分の心と身体について決める権利。
はい。お付き合いをすると、「自分の性」が「相手のもの」のようになってしまうことがあります。好きだったら何をしてもいいわけではありませんし、がまんしてそれに応える必要もありません。