7月31日、金融政策を決める二つの重要会合が開かれた。そのうち重要性がより高かったのは恐らく、ワシントンで開かれた米連邦準備制度理事会(FRB)の公開市場委員会(FOMC)ではないだろう。日銀は円相場を押し上げるため、金融政策正常化への遅遅とした、必ずしも平たんではない道程における重要な諸政策を発表した。
日銀は、これまで0~0.1%程度としていた短期金利の誘導目標を0.25%に引き上げた。また量的緩和策として実施してきた国債買い入れについて、極めて慎重なペースながら徐々に縮小していく方針を示した。月間の新規買い入れ額は、現在の6兆円から2026年初頭には3兆円に減ることになる。植田和男総裁の動きが性急過ぎると非難できる者はいないだろう。
それより異例なのは、植田氏がこうした政策に乗り出した理由が円相場だという点だ。円の価値はここ数カ月で大幅に低下し、7月半ばには1ドル=162円前後まで円安が進んだ。その後、日本政府による一連の為替介入を受けて、円相場は154円前後にまで持ち直した。円安の主因は日米の大幅な金利差だった。