『絶対内定2026 自己分析とキャリアデザインの描き方』の発売とともに2026年卒の就職活動が本格化している。本書の発売を記念して、人気企業で採用から育成までを支援するダイヤモンド・ヒューマンリソースの採用コンサルタント・福重敦士氏に就活の心得を聞いた。本記事では、企業説明会、OBOG訪問では何を聞くべきかについて解説する。(取材・文 奥田由意、構成 ダイヤモンド社書籍編集局)
情報の主語が誰なのかを考える
これまで私は、推し活としての就活(観客型就活)は失敗するから、当事者型の就活をしましょうと提案してきました。
今回は当事者型の就活生として、企業の本当の話は誰からどのように聞くのがよいのかについてお話します。
まず、基本的なことから。よく、説明会では企業はいいことばかり言っているけれど、実際の現場は説明会のイメージとは違う退屈な仕事ばかりだ、などとこぼす人がいます。これは典型的な観客型の人の見方です。
企業の話を聞くときは、主語が誰なのかに注意しなければなりません。企業から発せられる情報は、大きく分けて主語が3種類あると考えてください。
1つ目は企業自体が主語の話、2つ目は部署が主語の話、そして最後が働いている個人が主語の話です。
ある大手テーマパーク運営会社を例に取りましょう。
企業説明会や新卒採用サイトでは、その企業の仕事は、夢と感動を提供することです、といったようなことが語られます。具体的には、テーマパークの入場者に、夢や感動を与えるサービスを体験してもらうことかもしれませんし、グッズを買ってもらうことかもしれませんし、特別な雰囲気の中で、飲食してもらうことかもしれません。これらを提供することで、入場者から対価を得ることがその企業の利益になっているということです。これは企業が主語の場合であり、その言葉に嘘はありません。
しかし、主語が同社のある部署、たとえばフード販売を管轄する部署だったとしましょう。その部署では、1週間に仕入れてきた商品が入っているカートで、5千食を販売する売上目標があり、その部署全体の仕事は、できるだけ効率よくその数を消化することになります。
そして、最後は個人が主語の場合です。部署で大まかに割り当てられた目標が個人単位にブレイクダウンされます。たとえば、ひとり一日商品Aを1000食、商品Bを500食売るということが仕事になるかもしれませんし、毎週新しい商品企画を出すことも課されているかもしれません。
このように一口に仕事といっても、主語が企業か、部署か、個人単位なのかによって、仕事内容の説明が変わってくるのは当然のことです。
この3つの主語の関係性は、志望動機を語ったり、その企業について理解したりするときにも重要なポイントとなります。私は仮に、これを「志望の三角形」と名付けています。
まず、例に出したテーマパーク運営会社を志望するなら、その企業のもうけのしくみを知ることが大前提です。
この企業は、「夢と感動を売る=消費者に体験やサービスを提供する」ことで、利益を得ている。これは、「会社」が主語の場合であり、三角形の底辺の知識に当たります。
そして、そこから1段ステージが上がり、ステージ2になると、企業の中に具体的にどのような「職種」や「部署」があって、自分はその中のどの部分を志望するのか、というレベルで企業を見なければなりません。さまざまな部署のなかのひとつとして、例えば、商品企画販売という部署があり、その部署では、消費者のテーマパーク内での体験価値を高める手段として、限定品を企画販売しているといったようなことを知るわけです。
さらに三角形の頂点、ステージ3になると、その部署の中で「個人」がする仕事は何かというところまで解像度が上がります。たとえば、お客様の満足度を高めるような斬新な商品の企画を考え、同時に販売の仕方を考案すること、といった具合です。
そして、企業説明会やOB・OG訪問での質疑応答では、このステージ3まで理解が進んでいる状態で質問する必要があります。ここまで理解してはじめて、その企業で働いている一人ひとりの具体的な仕事の体験談を聞くことができるし、それを理解することができます。