『絶対内定2026 自己分析とキャリアデザインの描き方』の発売とともに2026年卒の就職活動が本格化している。本書の発売を記念して、人気企業で採用から育成までを支援するダイヤモンド・ヒューマンリソースの採用コンサルタント・福重敦士氏に就活の心得を聞いた。本記事では、就活のプロセスでますます重みを増すインターンシップでのふるまいを伝授する。有名企業のインターンシップを実際に数多く手掛けている福重氏ならではの企業側の視点を大いに参考にしてほしい。(取材・文 奥田由意、構成 ダイヤモンド社書籍編集局)

インターンシップ、二流の就活生はグループワークをがんばる。では一流の就活生は?インターンシップでは何が重要か?(Photo: Adobe Stock)

内々定はインターンシップで決まることも

 2025年卒から、インターンシップで得た情報を企業が採用活動に利用してもよいことになりました。案の定、インターンシップの時点で事実上の内々定を取っている学生も増えています。

 では、インターンシップはどのように受ければいいのでしょうか。学生はどうふるまえば内定に近づくのでしょうか。

 ここはひとつ「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」の「敵を知る」という方向性で、企業のインターンシップはどのような意図で作られているか、企業の側の観点からお話してみたいと思います。裏話というわけではありませんが、企業側の見方を知れば、就活生がしなければならないこともおのずと見えてきますし、インターンシップで必要以上に焦ったり、緊張したりすることもなくなるでしょう。

インターンシップは企業PRの場でもある

 就活生にとって、インターンシップは採用ルートのひとつにしか見えないかもしれません。しかし企業にとっては、非常に貴重な「企業PR」の場でもあります。最終的に入社先として選んでもらえるかどうかはインターンシップの質に大きく左右されるからです。

 就活生を魅了するインターンシップは、企業の世界観に就活生を引き込むタイプのものになっています。私はそれを「体験の品質を上げる」と言っています。つまり、その企業で実際に働いている感覚に近いものを体験できるようなインターンシップのことです。

 体験の品質を上げるにはいくつか方法がありますが、ひとつはグループワークの設定を細かくするということが挙げられます。たとえば、チームを組ませて顧客の課題を解決するといった形のワークショップの場合。

 ●●県のXXという地方で、地元の老舗大手A社、地元の中堅中小企業B社、都市部から進出した新興ベンチャーのC社がある。こういう条件の場合はどこと取引すればよいか

 などといったことを考えたり、実際に取り引きして、ある問題が起こったときに、どのような解決策を講じるかといったことを考えたりします。その場合の設定をできるだけ詳細につくっていくことで、参加者は本当にその企業の仕事をしているかのような疑似体験ができます。

 さらに、こうした疑似体験のシナリオの中に、さり気なく、その企業の「売り」になりそうなシステムやサービスを入れてみたり、その企業の取引先をもじった固有名詞をしのばせたりすることで、企業は学生に「我が社はこういうシステムもあるのですよ」とか「こういう企業と取引しているのですよ」と暗にPRしています。

 また、ワークショップでは、チームで話し合って、課題に対する解決策を発表しますが、企業側の担当者が、参加者にどの程度丁寧にフィードバックできるかということもこの体験の質に大きく関わります。

「さっきの発表で、AさんがXXを実施する決定をしていて、それはとてもよかったけれど、余裕があれば、B社に一言相談してから、実行したほうがよかったね」といった具合です。ワークショップ中の言動や、発表内容に対して、丁寧に評価してもらえることで、ワークショップ参加者の満足度は大きく向上します。

 このように、企業はワークショップの設計で、いかに学生の体験の質を上げるかに腐心しているのです。

 それを知ってワークショップに参加すれば、ただ目の前の課題をこなして担当者によく見られようとすることだけにとらわれず、企業は何を体験させようとしているのか、という大きな視点を持つことができ、より仕事内容の理解が深まるのではないかと思います。

一流の就活生は
お弁当もきれいに食べる

 最後に、企業が学生の何を見ているかについてもお伝えしましょう。これも、非常にシンプルですが、「ちゃんと一生懸命動いている学生」「チームワークができる学生」「出過ぎない学生」といったあたりになります(もちろん業種や企業のカルチャーによっては、評価のポイントが違ってくる場合もあります)。

 そして、意外に盲点なのが「基本的なマナー」です。

 たとえば、お昼を挟んでお弁当が出されたりする場合、「いただきます」や「ごちそうさまでした」が言えるのか。

 仮にお弁当を残す場合も、片付ける人が不快な思いをしないようにきれいに食べているか。こういった点は意外に目につきやすいものです。

 付け焼き刃で「お行儀よく」しても化けの皮は剥がれます。

 何も上品ぶる必要はありません。日頃から、挨拶や基本的なマナーを身につけるように心がけることが大切だと思います。

福重敦士(ふくしげ・あつし)
株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースHD営業局長
43年続く「ダイヤモンド就職人気企業ランキング調査」で毎年上位にランクインする超大手・人気企業の採用コンサルティングを手掛ける。メーカー、商社、金融、インフラ、マスコミ、コンサル等、採用マーケットを知り尽くしたカリスマ営業パーソン。同社のLIVEセミナーの講演も主宰する。