そんな環境でも、彼女は常に笑顔をたたえて周囲と良好な人間関係を築いていた。彼女は誰からも好かれたし、彼女自身も自分のことのように周囲の世話をすることに幸せを感じていた。ところが、親友と呼べる友達が何人いるかという質問に、彼女は即答できなかった。周囲と良好な関係を築けていても、本音を打ち明けられる友達は1人もいなかったのだ。

明るく見えるソユンさんでも
本音を話せないため孤独に

 友達から見たソユンさんも、いい人ではあるが気の置けない相手ではなかった。なぜなら彼女は、人の話を親身になって聞く反面、自分の本音は話さなかったから。そのため友達からすると、悩みや弱みを一切見せない彼女との間に距離を感じることがあった。それにより悲しい気持ちになることもあった。

 とはいえ、彼女も意図をもって自分の話をしないというわけではなかった。自身の暗い幼少期を知ったら、なんとなくみんなが離れてしまいそうな気がしたのだ。彼女はそういう理由から友達を失うことを恐れ、自分の話をしなかった。だが真の友達ならば、そんなにも過酷で絶望的な環境で育ちながら、周囲に明るく快活な姿を見せる彼女を称えるのではないだろうか。

 どんなに厳しい環境下でも、ふさぎこんでしおれているよりは、明るく元気でいたほうが印象がいいのはたしかである。この世の不幸を一身に背負いこんでいるがごとく、しかめっ面で愚痴ばかりこぼしている人がいるとしよう。その人の隣にいたら、なんだか自分まで気が滅入りそうで避けたくなるのが人の常だ。反対に、明るく元気な人を見ると自分まで気分が良くなってくるものである。そのためいつも笑顔が絶えない人たちは、どこへ行っても人気者になる。