「悲しくて泣きたくなる時もあります。だけど、泣こうとすると無意識のうちに頭の中が楽しいことでいっぱいになってしまって。意識してやってるわけじゃないのに、沈んだ気持ちがどこかへ消えてしまうんです。そうしたら、また気分が良くなってきて。そんな感じで、思い切り泣いたことはありません。私が泣いたら一家が総崩れになりそうで不安なんです」

「元気はつらつ」に見える人ほど
何かを抱えているかもしれない

 しかし、こうした息つく暇もない不断の活動は、いずれ人を疲弊させる。疲れ果てた心身は限界を迎えて、挫折すると同時に深いうつの沼へと真っ逆さまに転落するのだ。

「元気はつらつ」に固執するソユンさんのような人たちは、普通の人より挫折に弱い。それは日頃、周りからタフで完璧な人に見られようと背伸びしているからだ。失敗に対して極度の恐怖心を抱くのもそのためである。失敗したら周りからダメ人間だと思われ、がっかりされて見放され、1人ぼっちになるという無意識的な恐怖があるのである。それゆえどんな時も気を張って、人に隙を見せないようにする。

書影『「大人」を解放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)『「大人」を解放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)
キム・ヘナム 著

 要するに、常日頃元気いっぱいに見える人たちも、実は思い切り泣くこともできずに、弱く傷ついた自分を否定して、それを隠そうと必死になっているだけかもしれないということだ。

 もちろん、はつらつとした人たちが皆、問題を抱えているわけではない。これといった問題もなく、ただ純粋にクリエイティブで、元気なだけの人もたくさんいる。けれども、時々むなしくなって気力が尽き、悲しい気持ちになるのなら、その感情を恐れずに、そっと心の声を聞いてやることだ。

 自分は何者で、今どんな状態にあり、何を必要としているのかを、きちんと承知するべきである。表向きは笑っていても、心が泣いているのなら、周りに「元気はつらつ」な姿だけを見せようとして無理をしないでほしい。今は他の誰でもなく、あなた自身を労わるべき時だ。