一時的に雇用から離れる「離職」や「休職」など、人生の長いキャリアの中にある休憩期間を指す「キャリアブレイク」。欧州やアメリカでは一般的な文化だが、日本では働いていない期間=無職となり、あまりいい印象を受けないのが実情だ。しかし、一般社団法人「キャリアブレイク研究所」の創設者・北野貴大氏によると、ブレイク期間は必ずしもネガティブな選択ではなく、人生のターニングポイントになりうる決断だという。※本稿は、北野貴大『仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢 次決めずに辞めてもうまくいく人生戦略』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
仕事に疲れ果てた妻が呟いた一言
「無職になって休みたい」に驚いた
私が「キャリアブレイク」という言葉を知ったのは妻がきっかけです。
妻は新卒から商社で働き始め、3年目で別の商社に転職しました。その2社目の商社で4年働いた、社会人7年目のことです。
長らく企業戦士をしていたこともあって、人生を自由に選択する感性を失ってしまったような感覚の中「少しのあいだ無職になってみたい」と妻から相談を受けました。当時まだ、キャリアブレイクという言葉も文化も知らなかった私は、「鬱にでもなってしまった」のかと心配しました。
ところが、妻は冷静に、「やりたいことをやって、次の人生を選択するための感性を充電したい」と、教えてくれました。私は、なんて面白そうなキャリアを歩むんだと、少し楽しくなってしまい、妻の選択を応援することにしました。
ただ妻は、「応援や支援はいらない。自分で人生を選択していく機会にしたいので、ぜひ放っておいてほしい。何もせずに見守ってくれていたらそれで嬉しい」と、教えてくれました。ここで、私は、無職を弱者と捉えて支援が必要だと勘違いしていたことに気付きました。妻の場合は、弱者ではなく、転機をゆっくり味わいたいだけで、むやみに支援されることで弱者になってしまうことは、本意ではないと気付きました。そんな妻の奇行(?)から、私はキャリアブレイクを見守ることになりました。
人生に疲れた人は寄っておいで
転機のための宿「おかゆホテル」
人生の転機でしんどくなってしまった人たちに訪れてほしい。そう思って、私たちが始めたのが、転機のための宿「おかゆホテル」です。
ホテルと言っても、自宅の2階にたまたま空いている部屋があったので、友人を泊める感覚でスタートしました。
初めてのお客さんは3駅となりに住んでいた25歳の女性でした。聞くと、新卒で入社した会社に3年勤めて、キャリアブレイク中でした。