自分の棚卸しをし、最後に残るものを見極める
残ったものがあなたの核になる

宇宙飛行士・野口聡一さんが「他人の目を気にしすぎる人」に伝えたい、帰還後の苦悩から得た教訓とは?どう生きるか つらかったときの話をしよう』(野口聡一 著、アスコム、税込1540円)

 自分一人で自分のアイデンティティを築くうえで、次に大事なのは、自分の棚卸しをすることです。

 ちなみに、自分の棚卸しをするというのは、社会的な地位や役割、収入、他者との関係性、他者の評価など、それまでの自分にとってもっとも大事だと思っているもの、それまでの自分のアイデンティティを形成していた「他者から与えられたもの」からいったん離れることです。

 他者から与えられたものは、必ずいつか失われていきます。

 仕事によって得た地位や役割、収入、人間関係、評価などは、多くの場合、定年を迎えたり退職したりすると同時にリセットされますし、それ以外の人間関係や評価などに関しても、永遠に変わらないということはありえません。

 しかし、人間には正常性バイアス(危険が訪れる兆候があっても、「大したことではない」ととらえてしまう人間心理のこと)が働くため、「他者から与えられたもののみに基づいてアイデンティティを築いてしまうと、いずれ困る日がやってくる」とわかっていても、なかなか現状を変えることができません。

 だからこそ、本当に他者から与えられるものが失われ、困ってしまう前に、一度自分自身で棚卸しをしておく必要があるのです。

 他者から与えられたものをすべて失っても、自分の中に残るものは必ずあります。

 それこそが、自分一人でアイデンティティを築く際に核となるもの、どのような状況になろうともあなたが生きていくうえで支えとなるものであり、あなたが本当に大切に思うもの、あなたにとって絶対に譲れないものであるはずです。