お盆休みも明け、いよいよ上半期も残すところあとわずか。目標の達成に向けてラストスパートをかけたくなる時期ですが、目標を気にするあまり「自分本位な仕事をしてしまう」のも避けたいところ。目先の結果を求めるあまり、相手からの信頼を失ってしまうことも。
そこで今回は、2024年6月に発売するとたちまち重版となり、「仕事の本質を学べた」「お客様とのエピソードの数々に5回は泣きました」と反響を呼んでいる記憶に残る人になるの著者・福島靖さんと、株式会社Omoitsukiの代表であり『大人の夢の叶え方』の著者でもある幸義一さんに、人から信頼を得るためのコツについて話していただきました。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

詳しく知りもしないくせに口を出してくる「的はずれな上司」と、どう向き合うべきか?Photo: Adobe Stock

「口だけの上司」と、どう付き合う?

Q 上司が、仕事の内容を詳しく知りもしないのに口を挟んできて困っています。

幸 義一(以下、幸) 異動してきた上司が、詳しく知りもしないのに業務に口出ししてくること、よくありますよね。

福島 靖(以下、福島) めちゃくちゃありますよね。

 そういう場合、僕は相手を変えようとしないで、自分が変わることを心がけています。
 外資系の製薬会社に勤めていたとき、同じようなことが本当によくありました。自分より10個ぐらい上の先輩が、文句や人の批判をめちゃくちゃ言う人だったんです。自分が正しいみたいな感じで。
 でも、「じゃあ自分でやってみてください」となると、黙ってどこかに行ってしまう。まさに口だけの人でした。

 揉めたりもしてけっこう悩んだんですけど、そこにエネルギーを向けると疲弊するだけだなと気づきました。
 なので矢印を相手に向けず、自分に向けてみました。そんな先輩を反面教師にして成長してやろう、と。

福島 他人は変えられないけど、自分は変えられますからね。

あらゆる苦労は「未来のネタ」になる

 あとは、しんどいことがあったときは、その話をいつかどこかで使ってやろうと思うようにしています。
 たとえば以前、ずっと憧れていたある起業家の方と、同じステージでトークする機会をいただいたことがありました。本当に尊敬していた方だったので、まるで夢のようでした。

 でも僕、怒られたんです。
 しかも講演中に。数メートルの距離で。

 その瞬間に思ったのは、「やめたい」「逃げたい」というよりも、この経験をいつかどこかのセミナーや講演でしゃべってやろうということでした。

 まとめると、やっかいな人に悩まされているときは、相手を変えようとはせず、いったん感情の矢印を自分に向けて自分でできることをやる。そしてその経験は、いつか話せるネタとして持っておく。

 これが、僕からのアドバイスです。

相容れない相手の話を、徹底的に聞く

福島 全部ネタになると考えると、失敗なんてものはないですよね。

 僕はいまホテルのコンサルティングもやっていますが、ホテルはさまざまなスペシャリストの集まりなので、なかには自分の専門分野はプロ級だけど、部下やチームのマネジメントや、組織全体のことを考えた判断などは苦手という人もいます。
 僕の提案に対して、「とにかく反対だ」「従いたくない」と反発する人もいます。自分の道をひたすら極めてきたような人たちですから、それもしかたありません。

 そんなとき、僕はその人たちの話を徹底的に聞くようにしています。

 正直、相手は突拍子もないことを言っています。でも、「何でそう思うんですか?」「その考え方って、どこで学んだんですか?」「そのときって、上司はどんな人だったんですか?」とか、根掘り葉掘り聞くんです。

 海に近いホテルをコンサルしたときは、僕に反対する人とビーチに座って、2~3時間、話を聞きました。それも夜中に男2人で。
 でもずっと話を聞いていると、面白いことに、今度は向こうが僕の意見を求めてくるんです。自分の思いや考えを全部吐き出すと、それがどう感じられたかが気になるんですよね。

やっかいな人を変える、唯一の方法

福島 『記憶に残る人になる』でも紹介している、僕の好きな言葉があります。

「自分が理解されたと思ったとき、人は自分から変わっていく」

 人は、自分のことを変えようとしてくる人に対しては身構えます。でも、自分を理解してくれた相手の言葉には、耳を傾けようと思えます。そして、自分から変わってみようかと思えてくるんです。

 向こうから歩み寄ってきてくれる。 
 この状態をつくることが大事なんです。
 だから僕は、たとえ自分とは合わないな、嫌だなと感じる相手であっても、話を聞いて理解しようと試みています。

 もし僕が相談者さんの立場だったら、その上司の考え方や、そう考えるようになった背景を全部聞いてみます。そうすれば、相手もこちらの話に耳を傾けてくれるかもしれませんし、逆にこちらの考えが変わるかもしれません。

 こちらの考えを伝える前に、相手が何を考えているのかを知ることからはじめてみてはいかがでしょうか。

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんが行なった対談の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

詳しく知りもしないくせに口を出してくる「的はずれな上司」と、どう向き合うべきか?
福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。地元の愛媛から18歳で上京。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。株式会社OpenSkyを経て、40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。
幸 義一(みゆき・よしかず)

外資系の製薬会社、医療機器会社を経て2021年3月に起業。全くの未経験からTwitter(現X)をはじめ、約2年でフォロワーが5万人に。集客、販売、採用、PRの全てをTwitterで賄ってきた経験から事業展開。「あなたにお願いしたい」と言われる人(アカウント)になるためのコンサルティング。(株)Omoitsukiを創業し現在4期目。SNSを使って求職者を集めるSNS採用支援をメインサービスとして提供。2023年「大人の夢の叶え方」を商業出版し、著者として講演活動なども行う。