なぜ彼女はいつも愉快な顔をしてビジネスランチから戻ってくるのか

 今ではすっかり仲良くなったファニーは、言われてみればとても愉快な顔をしてランチから戻ってきます。そして担当のプロジェクトは何でも記事にして結果を出しまくっています。翌週、私は彼女に頼んでランチに同行させてもらうことにしました。

 ファッション誌のエディターとファニーは延々と脱毛の話をしています。最近行ったエステで試したレーザー脱毛が良くなかったこと。レーザーよりブラジリアンワックス脱毛の方がお勧めなこと。夏休みを控えた彼女達は自分磨きに余念がありません。食後のエスプレッソを飲み干し、席を立ちかけた時、ファニーは思い出したように言いました。

「そうそう、メールでプレス資料送ったけど、あの新製品、我が社ではめちゃめちゃ力を入れているのよ。ドカーンと記事にしてくれない?」

 驚いたことに相手は快諾。1分で決着をつけたファニーです。

秘訣はどうやら、信頼関係を築くことにあった

 秘訣はどうやら、信頼関係を築くことにあるようです。けれでも、競合が激しいこの業界、それだけでは記事になりません。ベテランでブリジット・バルドー似の同僚ソフィアのランチにも無理やりついていくことにしました。彼女に至っては、週刊誌のファッション担当記者相手に社内の噂話を暴露しています。相手も相手で、編集部内のゴタゴタを包み隠さず話しています。そしてランチも終盤に差し掛かった頃、ソフィアは単刀直入に切り出しました。

「このイベント、記事にならないと私、困っちゃうのよ。上司にどんだけ怒られるか。クビになるかもしれないわ。なんとかしてくれない?」

 これまた1分で4ページの確約を取り付けたソフィアです。横でひどく感心していると、私がランチをストレスに感じていることを知っている彼女は呆れ顔で言いました。

仕事はそっちのけで自分のぶっちゃけ話を披露してみた

「ため込むと身体に悪いわよ」

 仕事の話をしているのかと思ったら、ソフィアはストレスの話をしていました。

「そんなことで胃を痛くするなんて、バカみたい! 自分を大事にしなくちゃ」

 プリプリ怒っているソフィアは彼女なりに私のことを心配してくれているようです。

 心の中で彼女に感謝しながら、私はそれからというもの、プレスとのランチの際、ソフィアのように仕事はそっちのけで自分のぶっちゃけ話をするようになりました。するとどうでしょう。相手も会社のゴタゴタ話、健康上の悩み、恋バナをしてくれるようになりました。記者に「友達」と呼ぶことが出来る人が増え、気が付くと面白いほど記事を書いてもらえるようになっていました。

ストレスや悩みを抱え込まず、自分をさらけ出すことを覚えた時、驚くほど爽快な気分になった

 仕事の成果が一気に出るようになったわけですが、それよりもっと大きな収穫がありました。それは意外や意外、毎日が楽しくなってきたということです。ストレスや悩みを抱え込まず、自分をさらけ出すことを覚えた時、驚くほど爽快な気分になったのです。

 飲み会や女子会など、気の置けない仲間との片時は心のコリをほぐす、大切な時間です。相手は家族でも、友人でも、職場の仲間でも、誰でも構いません。ゆっくり愚痴を聞いてもらい、一緒に笑ってもらってください。ぶっちゃけ話をしてください。大事なのは、気兼ねをしないこと。取り繕わないこと。そして相手の話も聞いてあげること

 ストレスをため込むのは身体によくありません。パリジェンヌはそのことをよく心得ているのです。

※本稿は『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。