目の前で変化していく命に
愛情を注ぐ

 さっそく土と種を用意して野菜を育ててみようというときに、1つ覚えておいてほしいのは、完璧なマニュアルの類いはいっさい存在しないということです。野菜を育てるということは生き物を育てることであり、個体差や環境に大きく左右されるからです。

 単純にマニュアルを信じ込んでしまうと、枯れてしまったときにマニュアルのせいにしてしまいかねません。それよりも、目の前で変化していく命を、毎日欠かさず自分の目でしっかり観察することが大切です。

 何事もなく順調に育てば楽ですが、必ずしもそうはいかないのが生き物です。元気がなくなることもありますし、芽が伸びてもひょろひょろとしていて頼りない状態が続くこともあります。逆に勢いが良過ぎてプランターに収まりきらなくなることもあります。

書影『ファームシャングリラ 農業で叶える人と自然が共生する未来』(幻冬舎メディアコンサルティング)『ファームシャングリラ 農業で叶える人と自然が共生する未来』(幻冬舎メディアコンサルティング)
山岸 暢 著

 そういうときは、水や光、温度、湿度、土の状態を確認しながらあれこれ自分で試します。インターネットなどで調べればあらゆる情報が出てきます。ただし、正確で信頼性のある情報を見極めることが重要です。

 やがて実がなります。できた実はスーパーで売られている絵に描いたような見栄えではないはずです。形がいびつだったり、色が薄かったり、とても小さいこともあります。でも決して失敗だととらえずに、自分で調理して食べてみることが大事です。

 きっとそのおいしさに驚くはずです。そして自分で愛情をもって育てたものは、いくら完璧でなくても、とびきりおいしいことを心から実感できるのです。そして愛が生まれている自分に出会えるはずです。私はそこに命のつながりという真実があると思います。