「広島の離島」に約200人が移住!中高年を引きつける“斬新な取り組み”とは?写真提供:岩崎農園

広島県の瀬戸内海に浮かぶ離島、大崎上島町はレモン農家らを対象とした新規就農プロジェクトを実施中だ。同町とともにレモン振興を行うのは、レモン飲料・食品メーカーのパイオニアであるポッカサッポロ。官民あわせての農業振興の中身を大崎上島町・地域経営課(取材当時)課長の坂田誠氏とポッカサッポロフード&ビバレッジ・マーケティング本部産地形成グループリーダーの土屋淳一氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

健康効果やレモンサワー人気などで
伸びる国内のレモン需要

 都会での多忙なサラリーマン生活をやめ、自然あふれる地方で農業を営んで暮らしたいと思う人は少なくないだろう。しかし、多くの自治体が、移住者の受け入れに成功しているとは言い難い。年々、地方自治体の少子高齢化は進むばかりだ。ところが、広島県の大崎上島町では特産のレモンの振興によって、少しずつ移住者が増えているという。

「2009年から昨年までで200人弱が移住されています。これは農業以外の移住目的の人も含むものの、多くはレモンなどの就農を目的とした移住者です。レモンについては、2016年にポッカサッポロさんとレモン振興を目的とした包括協定を結ばせていただきました。その取り組みのおかげもあって、レモン団地(農業団地:生産や流通で農業の組織化が図られ、個人経営を超えて効率的に実働できるようにまとまった場所)の整備も進み、レモン栽培への恩恵がかなりありました」(坂田氏)

 一方、ポッカサッポロの土屋氏は、「移住の促進は、レモン振興の副産物」としながら、同社のプロジェクトの狙いと具体的な取り組みをこう話す。

「弊社では2030年までの中期目標として、『レモン総需要拡大』を掲げています。現在、レモンの健康効果、レモンサワーなどドリンクの人気、スイーツへの利用などにより、レモンの需要は伸びています。国産レモンへの需要も高まっていますが、弊社から日本国内に販売しているレモン果汁の98%は海外産で、国産レモンは2%と非常に少ないのが現状です。また、レモン農家も他の農家と同様に後継者不足が課題となっています。

 メーカーとしては農業に関わり、国産レモンが抱える課題を解決し、サステナブルな原料の調達を目指しています。大崎上島町での取り組みでは、耕作放棄地のレモン園地への再生、自社園地の開設、園地の農家への引き渡し、そして同町でのレモン食育などを行なっています」(土屋氏)

 こうした国産レモンの問題を解決すべく、ポッカサッポロは大崎上島町に空き家を活用したサテライトオフィスを構え、住民と一体となって課題に取り組んでいる。土屋氏含め、ポッカサッポロの社員も月の半分は、大崎上島町オフィスに駐在しているという。