脳科学研究の第一人者であり、『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』(ダイヤモンド社)を刊行したことでも注目を集める西剛志先生。NHK Eテレ「スイッチインタビュー」でゆりやんレトリィバァさんと対談したことでも話題になりました。
お笑い芸人の成功は脳科学的に説明できるのか? 西剛志先生が、ゆりやんさんの事例から、成功するために必要な脳科学的な方法をお伝えします。
人生を変える「イメージの力」
私は長年、成果を出す人と出せない人の違いを研究してきました。そこでひとつ言えることは、イメージの力は大きいということです。
先日、NHK「スイッチインタビュー」で対談させていただいたお笑い芸人のゆりやんレトリィバァさんは、8歳の頃からお笑い芸人になるんだという明確なイメージを持っていたそうです。
海外の数々の研究からも、イメージは私たちのパフォーマンスをアップさせることがわかっています。
例えば、小さなネズミと、大きな象をイメージしたときでは、体を押されたときの反応が違ってきます。
小さなネズミのときは少し押されただけでグラグラと体が動いてしまいますが、大きな象のときはどっしりとしてなかなか動きません。
これは、脳にある体性感覚野(皮膚や筋肉、関節などの体性感覚を処理する脳領域)が視覚野とリンクしているからです。イメージによってパフォーマンスは変化するのです。
ゆりやんさんは、自分がお笑い芸人になるということを疑わずに生きたら、それは当たり前のように叶うと思っていたそうです。幼い頃から体感覚がお笑い芸人になっていたから、成功できたのかもしれませんね。
必要な情報を引き付ける「注目バイアス」
イメージは「注目バイアス」という脳の性質も活性化させます。注目したものが優位に目に入る脳の性質です。あることをイメージすると、日常生活でそのことに関する情報がどんどん入ってくるようになります。
ゆりやんさんの場合は、お笑い芸人になるために必要な情報がどんどん飛び込んでくるようになったのでしょう。それが成功への近道になったことは間違いありません。
また、ゆりやんさんは小学生の頃に運動が苦手だったそうですが、鉄棒の練習を一生懸命やったら上手くできるようになったそうです。そのときの「人間は頑張ったらできるようになるんだ」という成功イメージが、のちのちの人生でも役に立ったそうです。
プラスのイメージを持って努力を続けることは、成功する上で欠かせないことなのですね。
落ち込んだときにあなたを救ってくれる「視点の数」
もうひとつ、成功する上で大切なことがあります。
視点の数を増やすことです。
視点が少ないと、ネガティブな方向に陥ったとき、どんどん落ち込んでしまうことになります。一つの失敗で「人生終わりだ」と思ってしまうのです。
誰だってうまくいかないことはあります。
「今回は失敗したけど、これはこういうふうに考えることもできるよね」と視点を増やすことができれば、自分を立て直すことができるのです。
嫌でたまらない人が身近にいて悩んでいるときは、その人のいい点を20個見つけてみましょう。何でもいいのです。1つでも多くいい点を見つけていくと、視点が増えてだんだんその人に対する嫌悪感は消え、ストレスは無くなり、脳のパフォーマンスも高まりやすくなります。