野手でも、宗佑磨内野手(横浜隼人・6位)を筆頭に、紅林弘太郎内野手(駿河総合・2位)、太田椋内野手(天理・1位)。そして、関西大から2年目の野口智哉内野手が開幕からショートの定位置を奪い、名古屋商大から独立リーグの徳島インディゴソックスを経て育成契約で入団したルーキー・茶野篤政外野手が右翼で活躍しています。いずれも下位指名か、上位でも無名選手でした。

体が強い選手が欲しい
上手い選手は要らない

 福良淳一元監督がGMとなってから、「高卒で、身体が強い選手をスカウトする。上手い選手はいらない」という方針を掲げて、あっという間にパ・リーグの下位常連チームが三連覇を果たすまでになったのです。確かに甲子園で勝ち抜くにはバントや守備など、粗削りな選手がいては勝ち抜けません。しかし、その部分はプロになってからも鍛えられるし、無名校なら筋トレ器具なども充実していないので、プロでさらに身体が強くなり球速も上がるはず、という考えなのです。

 実際、オリックス2軍では毎月会議を開き、育成する選手の順位を議論し、鍛える選手は試合数やイニング数を決めて、実戦力を高めています。オリックスが下位指名や無名選手から剛球投手を次々産み出すのを見て、各球団のスカウトも方向性を変え始めたと言えるでしょう。

 たとえば、巨人軍の現在のエースは戸郷翔征。聖心ウルスラ学園高出身で甲子園経験はなく、ドラフト6位です。抑えのエース翁田大勢も甲子園経験はなく、関西国際大に進学したものの、成績は阪神大学野球連盟1部リーグ戦で通算4勝3敗でした。よく1位指名に踏み切ったものです。

 阪神のエース才木浩人は、須磨翔風高から3位で入団したものの、21年に育成に落ちてから這い上がりました。広島の床田寛樹は中部学院から3位入団ですが、岐阜学生リーグという地味なリーグで注目度も低い選手でした。

 ここ数年、メジャー入りした投手も松井裕樹(桐光学園・楽天→パドレス)を除けば、高校時代は無名に近かった前出の山本由伸、千賀滉大(蒲郡・育成・ソフトバンク→メッツ)今永昇太(北筑高・駒大・DeNA→カブス)と高校時代は無名選手でした。