【ステップ（4）】カスタマーは、どのような代替ソリューションを活用しているか？

2022年11月、内閣主導で「スタートアップ育成5か年計画」が発表された。2027年をめどにスタートアップに対する投資額を10兆円に増やし、将来的にはスタートアップの数を現在の10倍にしようという野心的な計画だ。新たな産業をスタートアップが作っていくことへの期待が感じられる。このようにスタートアップへの注目が高まる中、『起業の科学』『起業大全』の著者・田所雅之氏の最新刊『「起業参謀」の戦略書ーースタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク』が発売に。優れたスタートアップには、優れた起業家に加えて、それを脇で支える参謀人材（起業参謀）の存在が光っている。本連載では、スタートアップ成長のキーマンと言える起業参謀に必要な「マインド・思考・スキル・フレームワーク」について解説していく。

顧客は代替ソリューションに満足しているか

　ここまで、顧客ニーズの仮説を見てきたがニーズが強い場合、多くの場合カスタマーは何らかの形で、代替案を用いていることが多い。

　その場合に、どのような代替ソリューションを活用しているかを確認する。果たして、カスタマーは満足しているのか？ はたまた、不満に思っているのかをチェックするのだ。

　起業家は、ポジティブバイアスにかかりやすい傾向がある。つまり自分の考えや着想をポジティブに過大評価し、代替ソリューションを過小評価してしまう傾向がある。

　しかし、ユーザーをよく観察すると、現状において代替ソリューションが充足しているというケースもしばしばありうる。その場合には、最初に攻めるセグメントからは外しておくのが無難だ。

　上図のように代替案がなく、市場のニーズが強く、今後市場サイズが大きくなりそうなセグメントをプロットしていくと、最初に狙うべきセグメントの解像度が高まっていく。

二股戦略の提案

　ここで1つのテクニックを紹介しよう。これを私は二股戦略と呼んでいる。上記のようにセグメントを絞り込むのは有効であるが、実際にそのセグメントが有効なのかどうかは、実は相対的に検証するのが難しい。

　そこでニーズが強く、未充足もある「魅力的に見えるセグメント」を2つ選んでいく戦略だ（余裕があれば3つ選んでもよいだろう）。

　2つのセグメントのパフォーマンスを比較できるので、客観視できる（バイアスの除去ができる）
2つのセグメントのうち、明らかにパフォーマンスが良くないほうを撤退することができる（サンクコストを回避できる）。

　これは拙著『起業の科学』でも書いたが初期のスタートアップは、できるだけスピードを高めて実験／検証を繰り返していく必要がある。

　下図のようにリソースに余裕があれば、複数のセグメントで検証してもよいが、どうしてもスピードが落ちてしまうので注意が必要だ。

起業参謀の視点

　起業参謀は、以下の点を考慮したい。

　・市場全体をどのように捉えているか？
　・セグメントの切り方にインサイトはあるか？
　・全体を見据えた上で、自分たちが狙うべき最初のセグメントの仮説があるか？
　・初期セグメントを2つ設定するような二股戦略を考えているか？

（※本稿は『「起業参謀」の戦略書ーースタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク』の一部を抜粋・編集したものです）