池袋駅東口の顔だった西武池袋本店が、様変わりしようとしている。かつてセブン&アイ傘下だった「そごう・西武」は、2023年9月にアメリカ投資会社とヨドバシカメラの連合によって買収されたことにより、2025年夏のグランドオープンに向けて大改装中なのだ。だが、この計画が浮上した際の従業員たちの不安は尋常ではなかった。なにしろ売り場面積の半分弱をヨドバシカメラが占めるとなれば、既存の百貨店スタッフも単純計算で半分で済む。2023年8月末、大手百貨店としては61年ぶりとなるストおよびデモ行進を打った労組トップが、当時の思いを振り返った。※本稿は、寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
酷暑の中で迎えたスト決行日
倒れる人が出るかもしれない
迎えたスト当日――。
私は池袋駅近くのビジネスホテルに泊まり、会場オープンと同時に朝食をとり、事務所に立ち寄ってから集合場所のサンシャインの会議室に向かった。
それにしても暑い。青の組合ジャンパーを着て歩こうと思っていたが、とてもじゃないが着ていられない。
手に持つわけにもいかないので腰に巻いて目印代わりにすることにした。
デモ行進が東池袋中央公園を出発するのは午前11時からと予定していたが、このまま気温が上がれば、脱水症状で倒れる参加者が出るかもしれない。
自分も自動販売機でビタミン注入とばかりにオレンジジュースを買って備えた。サンシャインの会議室にはミネラルウォーターのペットボトルを1人1本は行き渡るよう大量に準備していたが、少しでも体調が悪くなった人には、すぐに離脱してもらったほうが良さそうだ。実際、体調面の心配がある方には事前に申告していただくようにした。そのほかにも大量の栄養ドリンク、塩分補給食品を用意していた。
15番会議室に集まってくれた約300人もの参加者を前に、まず書記長の後藤健史がタイムスケジュールを説明し、そのあと、私がマイクを握った。