セブン&アイがそごう・西武売却へ、教科書的な“選択と集中”に潜む「2つの死角」Photo:PIXTA

流通大手のセブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店「そごう・西武」の売却に動き出しました。教科書的には、コロナ禍で不振が続く百貨店事業から撤退し、成長余力のある事業へ経営資源を振り向ける、“選択と集中”という言葉が浮かびます。しかし物事はそう単純でしょうか。そこに死角はないのでしょうか。(グロービス ファカルティ本部テクノベートFGナレッジリーダー 八尾麻理)

そごう・西武買収から16年
長く待たれた「多角化」から「選択と集中」へ

 2006年のセブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)によるそごう・西武(当時のミレニアルリテイリング)の買収は、祖業のスーパー事業から小売りのコングロマリット(複合企業)を目指す多角化の始まりでした。日本の将来の人口減少が鮮明となり、成長維持には、海外市場へ打って出るか、国内市場でM&Aを仕掛けて内需を取るしか方法がなかったのです。セブン&アイは後者を優先しました。

 当時から勢いのあった国内のコンビニ事業から得られるキャッシュを原資に、特定分野に強みを持つロフトや赤ちゃん本舗(2社とも2007年買収)、タワーレコード(2010年資本参加)などの専門店を相次いで獲得していきました。

 当時の経営陣が、顧客層も、店舗運営も、在庫回転率も、祖業とは全く異なる事業を傘下に収めたのにはワケがありました。デジタル化が加速する社会において、リアルな店舗の顧客接点をオンラインで統合した「オムニチャネル」によって顧客へ多彩な商品を提供することが、事業間のシナジー創出につながると信じていたからです。

 しかし残念ながらその成果を見ることなく、セブン&アイがそごう・西武の売却を検討していることが先日発表されました。今後は、全事業の営業利益の約85%を占めるコンビニ事業へ経営資源を集中し、成長が見込まれる海外展開に活路を見いだすとしています。これは、いわゆる「選択と集中」です。