多くの企業で「1on1」が導入されるなど、職場での「コミュニケーション」を深めることが求められています。そのためには、マネジャーが「傾聴力」を磨くことが不可欠と言われますが、これが難しいのが現実。「傾聴」しているつもりだけれど、部下が表面的な話に終始したり、話が全然深まらなかったりしがちで、その沈黙を埋めるためにマネジャーがしゃべることで、部下がしらけきってしまう……。そんなマネジャーの悩みを受け止めてきた企業研修講師の小倉広氏が、心理学・心理療法の知見を踏まえながら、部下が心を開いてくれる「傾聴」の仕方を解説したのが『すごい傾聴』(ダイヤモンド社)という書籍。「ここまでわかりやすく傾聴について書かれた本はないだろう」「職場で活用したら、すぐに効果を感じた」と大反響を呼んでいます。本連載では、同書から抜粋・編集しながら、現場で使える「傾聴スキル」を紹介してまいります。

「相づち」だけで30分間会話を盛り上げる「一流カウンセラー」のコツとは?写真はイメージです Photo: Adobe Stock

なぜ、「1on1」が盛り上がらないのか?

 企業研修講師として1on1研修に登壇して強く感じるのが、「相づち」の重要性です。

「1on1で話が続かない、盛り上がらない」と嘆くビジネスマンのロールプレイを見ていると、「相づち」のバリエーションが極めて貧困です。「はい……はい……ええ……はい……」。これでは会話が盛り下がっても仕方がないでしょう。

SNSのスタンプをイメージする

 では、どうすれば活き活きと会話を活性化させる「相づち」を打てるようになるのでしょうか? 

 そのヒントはSNSにあると思います。

 LINEやFacebook、X(旧Twitter)などは、投稿に対して気軽にスタンプ(表情)を押せるようになっています。「いいね!」「すごくいいね!」「びっくり!」「悲しいね……」「ウケるね!」「むかつくね!」などの言葉と表情(スタンプ)がワンセットになっているわけです。これを思い出しながら、言葉でそのまま伝えればいいのです。

「……マジ? それはビックリだね!……おー、いいですね!……ウケるね~!……いやぁそれはむかつくわ……うん、うん、それは大切ですね」など。ポイントは単にスタンプを言葉で表現するだけでなく、前後に「うん、うん」「マジ?」「いやぁ」「おー!」などの感嘆符を混ぜることです。

相手の話すエピソードを「体験」する

 もちろん、わざとらしく「演技」をするのではなく、相手の話すエピソードを脳内で思い描きながら、まるで自分がそのエピソードを体験しているように味わうことが大事。そこで自然と湧き出る感情を、「スタンプ的相づち」で表現するのです。すると、自然に「言葉」と「表情」が連動して、相手にも「共感」が伝わるはずです。その「共感」が生まれたときに、コミュニケーションは盛り上がり始めるのです。

 優れたカウンセラー、コーチは、質問を一切使わずに「相づち」だけで30分話をもたせることができるそうです。また、「相づち」は会話のガソリンであるとも言われています。見逃されがちな小さなスキルですが、その効果は抜群。「スタンプ的相づち」をぜひ使ってみてください。

(この記事は、『すごい傾聴』の一部を抜粋・編集したものです)

小倉 広(おぐら・ひろし)
企業研修講師、心理療法家(公認心理師)
大学卒業後新卒でリクルート入社。商品企画、情報誌編集などに携わり、組織人事コンサルティング室課長などを務める。その後、上場前後のベンチャー企業数社で取締役、代表取締役を務めたのち、株式会社小倉広事務所を設立、現在に至る。研修講師として、自らの失敗を赤裸々に語る体験談と、心理学の知見に裏打ちされた論理的内容で人気を博し、年300回、延べ受講者年間1万人を超える講演、研修に登壇。「行列ができる」講師として依頼が絶えない。
また22万部発行『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)など著作48冊、累計発行部数100万部超のビジネス書著者であり、同時に心理療法家・スクールカウンセラーとしてビジネスパーソン・児童・保護者・教職員などを対象に個人面接を行っている。東京公認心理師協会正会員、日本ゲシュタルト療法学会正会員。