子どもの様子が他の子と少し違ったり、学校の教師から指摘されたりすることで「もしかして、うちの子は発達障害かも……」と悩む保護者が増えています。公認心理師の湯汲英史氏は、まず発達障害の正しい情報を知ることが大切だと言います。※本稿は、湯汲氏が監修した『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』(日本文芸社刊)の一部を抜粋・編集したものです。
同じ症状名でも特性の現れ方は人によって違う
症状名だけで特性は決まらない
ひと口に発達障害といっても、それによって現れる特性はさまざま。たとえば「自閉スペクトラム症(ASD)」と診断された人のすべてが「場の空気や人の表情を読むのが苦手」「人とのコミュニケーションが上手にできない」といった特性を必ずしも持っているわけではなく、人によって特性の現れ方や程度の強弱は違っているのです。
相互のコミュニケーションが難しい子どもがいる一方で、呼びかけに応じたり、自分から積極的に話しかけたりできる子もいるので、単純に症状名だけで「この子はこういう特性がある」と決めつけてしまうのは避けるべきでしょう。たとえるなら、双子やきょうだいでもそれぞれに個性があり、性格が違っているのと同じことなのです。
また、発達障害に見られる特性のいくつかは、成長とともにその程度が弱まり、次第に目立たなくなっていくこともあります。療育などを通じてさまざまな経験を積み、社会のルールに触れることで、その時々の状況に合わせた好ましい身の振る舞い方、適切な発言の内容などを学び、次第に適応できるようになっていくのです。