滑り出しは上々といったところだろうか――。7月31日公表の住友ファーマの24年度第1四半期の決算は、営業利益段階での赤字こそ残ったものの、売上収益は増収、純損益も黒字化するなど、まずまずの内容だった。売上収益の増加は主力製品が伸びたためで、通期予想に対する進捗率は26.8%。前年同期で389億円の赤字だった純損益が159億円の黒字に転換できたのは人員削減などの構造改革によるコストカット効果が得られたからだ。6月に就任したばかりの木村徹社長は無事、初陣を飾れたこととなる。
ただ同日、さらなる構造改革のため、同社過去最大規模となる約700人の希望退職を募ることも発表した。11月30日時点で40歳以上かつ勤続5年以上の社員が対象。製造部門と、将来の柱に位置付けている再生医療担当部門は除く。
700人は国内社員の4分の1に相当するということから尋常ではない。今期コア営業利益黒字化の必達を掲げるなか、手は緩められないということなのだろう。木村社長は経営トップとしては「雇用を守るのは非常に重要なミッション。非常に申し訳なく思う」としつつも、「黒字体質に転換していく」と意義を強調した。
巨額の赤字を計上し、自社だけでなく、親会社である住友化学の経営を傾かせるまでに至った住友ファーマの蹉跌は、散々報じられてきたこともあり、詳細は省く。しかし、今回の決算を受け、最悪期は脱したとの機運が広がっているようだ。279円(5月30日、年初来安値)にまで落ち込んだ株価も、約1年ぶりに600円台後半にまで戻している。木村社長は8月8日の記者会見で、経営再建は「緒に就いたばかりだ」と引き締めたが、親会社である住友化学の岩田圭一社長は「道半ば」としたうえで、8月21日付日刊工業新聞のインタビューで「第一ステップの止血はできた」と一定の評価を与えている。