武田薬品 「破壊と創造」最終章大手製薬会社の本社が軒を連ねる東京・日本橋にある武田薬品工業のグローバル本社 Photo by Masataka Tsuchimoto

国内製薬最大手、武田薬品工業が今年度に実施する国内のリストラ内容の詳細が、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。連載『武田薬品 「破壊と創造」最終章』の本稿では、2014年に招聘(しょうへい)された外国人の経営トップ、クリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)の“最後の大ナタ”となるかもしれないその内容を速報する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

1400億円をかける事業再編
国内でもいよいよ着手へ

 フューチャー・キャリア・プログラム――。国内製薬王者、武田薬品工業において、前向きな印象を抱かせる名称のプログラム。要は希望退職者募集のことである。このプログラムが今年度、再び発動される。

 巨大製薬会社(メガファーマ)の一つ、英グラクソ・スミスクライン(GSK)幹部だったクリストフ・ウェバー氏は2014年、長谷川閑史社長(当時)によって武田薬品に招聘(しょうへい)された。当初は社長COO(最高執行責任者)だったが、15年から社長CEO(最高経営責任者)に。ウェバー氏は今日までグローバル化や競争力強化の名の下、出血を伴う大胆な社内改革を実施してきた。

 自身の任期満了時期については、就任当初は「25年ごろ」を匂わせていた。その通りであれば残り約1年であり、冒頭のフューチャー・キャリア・プログラムは最後の大ナタを振るう機会にも映る。ただ、最近の複数のメディアインタビューでウェバー氏は、「25年ごろ交代説」を打ち消すような発言もしている。

 ウェバー氏は今年5月上旬の24年3月期決算発表のタイミングで、25年3月期の事業構造再編費用に1400億円を投じると発表した。この額は、ウェバー体制で過去2番目の規模である。大規模リストラの可能性に業界や社内に激震が走った。

 この事業再編に関し、武田薬品の海外組織に関するリストラは5月以降、さみだれ式に明らかになってきたが、日本人社員や古くから在籍する武田薬品社員が最も影響を受ける国内でのリストラは明らかになっていなかった。

 武田薬品は今月2日、「JPBUおよび日本のR&D(研究開発)組織においては、事業運営体制の変更にあわせ、従業員の転進を支援する『フューチャー・キャリア・プログラム』を実施する予定」と発表した。ついに、国内のリストラにも踏み切る方針を示したのだ。とはいえ、詳細については、「今後武田薬品労働組合と慎重に検討を重ね、内容を決定していく予定」として詳細は伏せられていた。

 武田薬品の発表は労使協議が終盤であることを匂わせるものであったが、ダイヤモンド編集部が入手した内部資料でその詳細な中身が判明した。次ページでは、募集対象者に加え、加算退職金の具体的な水準も明らかにする。