中国は機密情報を獲得するという考え方も異なる。ロシアが政治・軍事に関する文書や特定の軍事技術といった「現物」の獲得を重視するのに対し、中国スパイは政治的な影響力の行使や民間の経済・技術の情報収集など、幅広い目的を持つ。

 中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない。

 一方で、現在ではサイバー空間上に多くの情報が存在するため、中国の「千粒の砂」戦略は本当に有効なのかという議論もあるようだ。

金銭面や精神面の支援などで
対象者の政治家を依存させる

 中国の諜報活動の手法について、元公安調査庁金沢事務所長の藤谷昌敏氏は、「中国情報機関によるアセット(協力者)獲得の特徴は、例えば、展示会等における商用を機会とした接触、趣味や飲食の場で偶然を装う接触などを端緒として、その後、ターゲットと1対1で面談し、相手の性格、嗜好、弱点や不満等を聞き出す。

 そして最初は製品のパンフレットの入手程度の軽い仕事を頼んで反応を見、次第に要求する情報のレベルを上げていく。相手が給与や人事の不満を抱えていることが分かれば、金銭の授受や有利な条件での転職を勧めてくる」(日本戦略研究フォーラムウェブサイト「経済安全保障を積極的に推進する日本政府、公安調査庁との連携に期待」)としている。