瞬間風速では前月比10%を超える株価反落も

 ただし、これは月間平均値(始値、高値、安値、引値の平均)なので、瞬間風速としての安値はもっと低くなる。過去20年の実績では、ここで使用した月間平均値より月間最安値は平均で4.2%も低いので、毎日相場を見ていれば月間平均から8.7%(=4.5+4.2)以上も低い月間安値を見る可能性が十分にあることになる。8月平均比8.7%の下落はTOPIXなら2421、日経平均なら3万3430円だ。大ざっぱには日経平均で3万円~3万5000円のレンジが安値圏としてあり得ると想定しておこう。 

 こうした反落に対してどうするかは、各自の投資姿勢次第だが、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)で長期の積立投資をしている人にとっては、気にせずに積立投資を継続すれば良いだけの値幅だろう。

 さらに米国株価指数(S&P500 )も同時に下落する場合は、この分が追加の下落として加わる。S&P500が仮に前月比で5%下落した場合は、それに対応するTOPIXの下落は約3.6%(=0.713×5.0%)だ。従って上記の8.5%のドル安・円高による下落効果と合計して約8.1%(=4.5%+3.6%)の下落となる。瞬間風速では前月比10%を超える下落も当然あるだろう。

 前月の高値から翌月の安値まで10%前後の反落局面は、大ざっぱに言って、日経平均でもTOPIXでも1年間に平均1~2回程度は起こっている。従って長期投資に徹するなら、その程度の反落局面は「普通のこと」として受け止める必要がある。

 米国株の下落と円高・ドル安が重なる局面は、「ソフトランディング期待」が消え、今後の米国の景気鈍化・後退が本格化しそうだという「予想のシフト」が起こったときに起こる。そうした事例の最大規模のケースは、2008年のリーマンショックの局面だ。現状では、今の米国に金融危機型の深刻な景気後退を起こすリスクはほとんどなく、筆者はマイルドな景気後退を予想している。

 さらに言い添えると、1ドル=130円をはるかに超え、1ドル=100円前後まで円高・ドル安が進むリスクもゼロではないが、短期・中期でのそうした可能性はかなり低いと思う。これには2つ理由がある。

 理由の1つは、今年1月からの新NISAなどで買われている人気の投資信託がS&P500やMSCI ACなどドルを中心にした外貨建てであり、これによって月間数千億円から1兆円前後の新規の円売り・外貨買いが生じていることだ。

 もう1つは日本の年間15~20兆円規模の経常収支黒字が、1990年代の貿易収支黒字主体の構造から所得収支主体の構造に変化していることだ。その結果、直接投資や証券投資の外貨建て受取り配当や利息の半分程度が、円転されずに海外に再投資され、外為市場での外貨供給曲線を外貨高・円安方向にシフトさせている。こうした事情に変化が生じるまで、以前のような水準の円高には戻り難いだろう。