二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!#1写真:野口 博(FLOWERS)

リーマンショックやコロナ危機などの暴落を乗り越え、ピンチをチャンスに変えてきたのが、資産800億円の“伝説の投資家”清原達郎氏である。今回、8月5日はどう動いたのか。特集『二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!』の#1のインタビューでは、銘柄選びを含めて暴落当日のリアルな取引を紹介。同時に「次の一手」や「暴落をチャンスに変える心得」についても直撃した。仮に二番底がなくても、忘れた頃に「パニック」が発生するのが株式市場である。ぜひ参考にしてほしい。(聞き手/ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

 2004年に約100億円を稼ぎ、所得税約37億円を納税。05年発表の最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに名を連ね、「伝説のサラリーマン投資家」として有名になったのが、ヘッジファンド運用で驚異的な成績を残した清原達郎氏(65歳)だ。昨年まで運用していたタワー投資顧問の基幹ファンド、「タワーK1ファンド」のパフォーマンスは25年間で実に93倍に上る。

 清原氏の運用術は『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)に詳しいが、その特徴の一つに「暴落をチャンスに変えている」ことがある。そして、今回の暴落相場でも「伝説のサラリーマン投資家」は大底で100億円以上の資金を投じ、短期間で20億円以上の利益を得ていた――。

暴落の理由を詮索するのではなく
“ただひたすら買う”が正解だった

――春のダイヤモンド編集部のインタビューでも日本株の高値警戒感を指摘していました。今回の暴落を予見していたのでしょうか。

 日経平均株価(日経225)が3万円を超えてから4万円を突破するまでのスピードが速過ぎたので、警戒感を持っていました。日本企業の価値が短期間で3割以上向上することなどあり得ないからです。

 一方、私が重視しているテクニカル指標の「ネット裁定買い残」は暴落前で7億株。5億株以上で注意信号、10億株以上で危険信号だと私は勝手に思っていますので暴落は予見できませんでした。

 実際、暴落前の株価がバブルだったかというと、そうではなかったと思います。暴落前でも日本株のPER(株価収益率)は17倍にすぎず、10年物の国債が1%から3%まで上がったとしてもバブルとはいえない水準です(急に3%になればもちろん株価は下がります)。むしろ、私は割安とはいえない米国株の暴落を心配していました。

 今回の日本株の暴落は、ファンダメンタルズで説明ができるほどの理由はなく、「フラッシュクラッシュ(テクニカルな暴落)」に近い。暴落の理由など詮索せず、「ただひたすら買う」のが正解だったと思います。

書影『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)きよはら・たつろう/1981年野村證券入社。その後、モルガン・スタンレー証券やスパークス投資顧問を経て98年、タワー投資顧問で基幹ファンドを立ち上げ。2005年発表の最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに。写真は『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)。

――今回の暴落前後、特に当日、翌日の動きについて、銘柄選びを含めて詳しく教えてください。

 私は引退したので、株価が暴落した8月5日は旅行から帰ってくる途中で相場を見ていませんでした。暴落に気が付いたのは家に着いた午後5時です。

 もし現役なら8月5日に最低100億円は株を買っていたでしょう。私はもう終活の段階を迎えており、株を活発に取引するインセンティブを失っている「はず」でした。

 ところがこの下げを見て本能的に「株を買わなきゃ」とスイッチが入っちまったんです。「巨大地震が起きているわけでもなく、核戦争が起きているわけでもない。それなのにこの下げは何だ!」ってわけです。

次ページでは、具体的な銘柄選びの考え方を含め、清原氏の暴落時の生々しい取引を詳しく解説。「パニック相場のセオリー」や「日本株の次の一手」など、個人投資家へのメッセージも満載の超ロングインタビューをお届けする。