スズキの野望#6

スズキが脱炭素戦略の一環としてインドで進めている、牛ふんをエネルギー源とする圧縮バイオメタンガス(CBG)車に注目が集まっている。電気自動車の普及まで時間がかかるとみて各社がハイブリッド車の開発・製造に集中する中、なぜ、スズキは牛ふんに着目したのか。特集『スズキの野望』#6では、牛ふんをエネルギーにするメカニズムを解明するとともに、スズキの狙いを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

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全方位戦略で脱炭素進めるスズキ
牛ふんをエネルギー源とするCBG車に注目

「カーボンニュートラルの解決に向けて、各地域の適所適材の方法とは何かを考え、アンサーを見つけた。電気自動車(EV)はもちろん、水素など全方位戦略(マルチパスウェイ)で挑戦していく」

 昨年10月に開催されたジャパンモビリティショーで、スズキの鈴木俊宏社長は力強く宣言した。ブースには目玉であるスポーツタイプ多目的車(SUV)のEV「eVX」や同年発売された軽自動車、新型「スペーシア」などと並んで、個性的なブルーのクルマが展示されていた。

 それは、インド市場向けに販売されている「ワゴンR」をベースにした圧縮バイオメタンガス(CBG)車だ。牛のふんから精製されるメタンガスをエネルギー源としている。

 スズキは2022年に、牛ふんが発酵することで発生するガスからメタンを精製する実証実験開始に向けた覚書をインド政府関係機関の全国酪農開発機構と締結。実用化に向けた取り組みを進めている。

 EVの普及まで時間がかかるとみて、日系自動車各社がハイブリッド車(HV)の開発・製造に集中する中、なぜ、スズキは牛ふんに着目したのか。次ぺージでは、牛ふんをエネルギーにするメカニズムを解明するとともに、スズキの狙いを明らかにする。