大阪府が2024年度から段階的に導入した高校授業料の“完全”無償化。その影響は大阪に追随した東京都をはるかに超える。24年度の府立高入試では全日制145校のうち、約半数の70校が定員割れ。旧制中学を前身とするナンバースクールも定員を満たせなかった。特集『東京&大阪で高校授業料無償化 常識崩壊!高校入試最前線』(全8回)の最終回では、激震の大阪府の24年度高校入試の分析とともに、さらなる激変が予想される25年度入試を占う。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
私立高校を第1志望とする受験生が
初めて30%を突破した
「これらの大阪府立高校までも定員割れになるとは、3年前は誰も想像できなかった」――。全日制145校中70校が定員割れとなった2024年度の府立高校入試をそう振り返るのは、関西の大手高校受験塾、馬渕教室(ウィルウェイ)高校受験事業部の柳川事業部長だ。
定員割れした府立高に、受験熱が高い北摂エリアの人気校として知られた槻の木高や、旧制中学校を前進とする、いわゆる「府立ナンバースクール」である富田林高、鳳高という伝統校の名があったことが、府内の高校関係者に大きな衝撃を与えたのだ。
その理由は、まずは大阪府が24年度から段階的に導入した高校授業料の完全無償化制度にある(下図参照)。
関西の大手学習塾、アップの井上隆弘執行役員は「私立高を第1志望とする私立高専願者の比率が24年度、初めて30%を超えた。授業料無償化によって、公立高優勢として知られる大阪府でも、中堅レベルの学力層で、公立高から私立高へのシフトが起きた可能性が高い」と話す。
加えて、3年連続の定員割れなどで府立高を廃校対象にする「大阪府立学校条例」によって府立高の統廃合が進んでいることが、これまで人気校や伝統校であったはずの府立高の定員割れまでも引き起こす一因になっている。
馬渕教室の柳川氏は「条例に基づいて廃校になった府立高の定員減少分を穴埋めするため、周辺にある他の府立高校の募集定員を増やした結果、それらの府立高でも入試倍率が下がり、一部の学校で定員割れに至っている」という。
次ページでは、24年度入試で廃校の対象となっている、3年以上連続の定員割れとなった府立高と、25年度入試で定員割れすれば3年連続となる府立高のリストを掲載。また、来る25年度入試の行方を分析する。