そのとき義父がどこにいたのかというと、駐車場を必死になって歩いていた。車に置き忘れた財布を取りに戻っていたらしい。義母が、大好物のお菓子を買いたいと言ったため、義父は慌てて財布を取り出そうとしたのだが、うっかり愛用のウエストポーチを車中に忘れてきてしまったことに気づいた。そこで義父は、「ちょっと待っていなさい」と義母に声をかけて、必死に戻った(でも90歳だから、歩みは遅い)。

登場人物全員が
気の毒すぎる

 最初はレジの近くで待っていた義母だったが、義父が遅いため、徐々に店の出口に近づいていたのだろう。夫は何も気づかず、セルフレジで上機嫌で商品バーコードを機械に読ませていたと思われる。義母は、一歩、そしてまた一歩と出口に近づいていた。右手には大好物のおせんべいの袋が握られていた……。

 本当に幸運なことに、義母は最後の一歩を踏み出さなかったし、夫がギリギリで気づいたために事故を防ぐことはできた。でも、このアクシデントには、深く考えさせられた。