まず、登場人物全員が気の毒だ。

 夫は両親のためを思って買い物をしていた。義母はきっと、息子が買い物をしてくれている間に、ふと目についた大好物のおせんべいを、自然に手にしただけだ。そして義父に対して「これ買って」と素直に言った。

 それを聞いた義父は、財布がないことに気づき、車へと戻った……いや、車に戻らなくてもよかったのでは?そこは普通に、息子に買ってもらえばいいんじゃね?と、さすがに思う。

 ただし、そこには義父の美学のようなものが見え隠れする。彼は私たちに何かを支払わせようとはしない。何であっても、絶対に自分で払うと言う。そんな気持ちで、90歳超えの義父が痛む足を引きずって、息子に甘えることなく自分の財布を取りに行った姿を想像すると、やはりとても気の毒だなという気持ちになる。

1回のアクシデントで
学ことはたくさんある

 そして、一番気の毒なのは、義母だ。しっかりしている頃の義母だったら絶対にしない行動だ。本当にきちんとした人だった。誠実な人だった。

 確かに、私に対して意地悪だったことはある。息子に対して高級さくらんぼを買ってきたのに、私に潰れた値引き品のコロッケを買ってきたこともある。しかし、それぐらいのことだ(それぐらいだけど忘れない私)。