仕事と家事を抱えながら認知症の義母と90歳の義父のケアに奔走していた村井理子氏。はじめはイマイチ動きの鈍かった夫も、やっと本腰を入れて介護するようになったというが、実子ならではの介護の難しさも。人気エッセイストが記すリアルな介護奮闘記。本稿は、村井理子『義父母の介護』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
夫と義父母に降りかかった
思いもよらぬアクシデント
夫が介護に積極的に参加するようになって数カ月が経過した。週末になると実家に行き、食料を調達し、家のメンテナンス(電球を替えたり、庭の手入れをしたり)を行い、両親とのコミュニケーションもバッチリ取れている様子。これはいいではないかと思っていた矢先、考えさせられる事件が発生したので張り切ってお伝えしよう。
その日、夫は義父の通院の付き添いをしていた。義母1人で留守番はさせられないので、義母も一緒に病院には来ていた。診察はスムーズに終わり、会計を済ませて病院近くのレストランへ。
昼食を食べて、その足でスーパーに買い物へ。夫は両親のために夕飯用の食材を揃え、義父と義母も2人仲良く食材を眺めたりしていたという。夫は買い物かごを持って会計へ。義父と義母は息子が会計を済ませるのを待っていたはずだった。しかし事件はここで起きた。
会計を済ませた夫が、ふと両親を探すとどこにもいない。あれ、どこに行ってしまったのかなあと思いつつ、店の出口を見てぎょっとした。そこに義母が1人で立っていたというのだ。それも、右手に会計を済ませていない商品を持って。あともう少しで店を出てしまうところだったそうだ。