逆に、ネイティブな発音で話す日本人に対して、彼らの表情が変わる瞬間も何度も見てきました。ネイティブな発音で話す人はたいてい落ち着いて、堂々と話をします。相手の外国人にしてみれば、「この人となら、細かな契約の話ができる」「信頼できそう」と思え、対等に、本気で話そうとしてくれるでしょう。

 口では通じればいいんだと言っている人の多くは、実際のところ、いつも通じるかどうかドキドキしている状態なので、単語が出てこないとすぐに謝ったり、結局は自分の言いたいことも言えずに相手に合わせているのが実情です。

 下手でも堂々としていろとはよく言われますが、話す言葉がつたないのに堂々としている人は、かなりインチキくさく見られます。これではビジネスをやる上でフェアな関係は構築できないでしょう。

 英語をネイティブ並みに話すというのは非常にハードルが高いことは事実ですが、これからの世界で生きる人は、英語なんて道具なんだから伝わればいいとか、発音なんて気にするなという風潮には乗せられないようにしてください。

 世界においては、英語の発音がその人の器量、どういう会社でどういう仕事をしているのか、どんな教育を受けてきたのか、どんなことに興味を持っているのかといった人格そのものを表すことにもなりかねません。

 訛った英語で話すことがいかにまずいことなのか、おわかりになったでしょうか。同じアジア人でも中国人や韓国人は、もっと真剣に「話す」ことを意識して英語を勉強しています。受験英語に毒されている日本人は、どこまでも流暢に話せるように、不断の努力をする必要があるのです。(最終回に続く)

次回は5月17日更新予定です。


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山元賢治(やまもと・けんじ)
1959年生まれ。神戸大学卒業後、日本IBMに入社。日本オラクル、ケイデンスを経て、EMCジャパン副社長。2002年、日本オラクルへ復帰。専務として営業・マーケティング・開発にわたる総勢1600人の責任者となり、BtoBの世界の巨人、ラリー・エリソンと仕事をする。2004年にスティーブ・ジョブズと出会い、アップル・ジャパンの代表取締役社長に就任。iPodビジネスの立ち上げからiPhoneを市場に送り出すまで関わり、アップルの復活に貢献。
現在(株)コミュニカ代表取締役、(株)ヴェロチタの取締役会長を兼任。また、(株)Plan・Do・See、(株)エスキュービズム、(株)リザーブリンク、(株)Gengo、(株)F.A.N、(株)マジックハット、グローバル・ブレイン(株)の顧問を務める。その他、私塾「山元塾」を開き、21世紀の坂本龍馬を生み出すべく、多くの若者へのアドバイスと講演活動を行っている。
著書に『ハイタッチ』『外資で結果を出せる人 出せない人』(共に日本経済新聞出版社)、共著に『世界でたたかう英語』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。