iPodからiPhoneまで、アップル復活の舞台裏を知る「唯一の日本人経営者」が、アップル退社後に初めて語る「これからの世界」での働き方。日本人がすがる「アジアン英語」も「グロービッシュ」も世界では通用しない。発音こそが人格を表し、対等なコミュニケーションを可能にするのだ。

外国人は「発音」で人を見分ける。
「通じればいい」は見下される

「ケンジ、すごいね。日本人なのに英語を話す」

 海外に行くと真顔でこう言われることがあります。グローバル化が叫ばれて久しいのに、いまだに日本人は、世界では圧倒的に英語を話せない国民と思われています。それなのに、まだどこかで「英語はできなくても大丈夫」「来日する外国人が日本語を学ぶべきだ」などと考えていないでしょうか。

 英語がグローバル・コミュニケーションの共通語の座に君臨している現代社会において、英語ができなければあなたのチャンスや可能性はしぼむ一方です。日本のマーケットだけでは、成長が困難になりつつある今、企業の海外進出は必至だと言えるでしょう。

 世界で戦うなら英語もできるほうがいいという話ではなく、「英語がもっとも大切」だと言えるのです。もちろん英語さえできればいいということではありませんが、日本人は常に英語ができない言い訳を用意しています。

 では、世界で本当に通用する英語力とはどういうものでしょうか。一般的に英語というと、文法や語彙数が実力の証と考える方が多いのですが、ヒアリングとリーディングだけのTOEICの点数が900点を超えていても、まったくビジネスでは通用しないことがよくあります。ビジネスの場面ごとにふさわしい話し方を身につけることが何より重要です。

 もちろん大前提としてのコミュニケーションスキルは必要になってきます。「このミーティングでの自分の役割は何だろう」「自分の意志をどう伝えたら相手にもっとも刺さるのだろうか」「相手は何を望んでいるのだろう」などを考えながら話さなければならないことは、日本語だろうと英語だろうとまったく同じです。

 TOEICのテストの点数を上げるコツやノウハウをどれだけ勉強しても、現場で使えないことは容易に想像がつくと思います。韓国のサムスンでは、独自のスピーキングテストを開発し、それを海外転勤の指標にしているそうですが、コミュニケーション力は英語以前の問題であり、現場で鍛える以外に方法はないのです。