あの陰山先生も英語が苦手だった!? 必要に迫られて50歳から取り組んだ英語の再学習のために自ら編み出したオリジナルの学習メソッド。そのエッセンスを2日連続で紹介します。今回は「発音なんて気にしなくていい」「学校で学んだ英語力が十分使える」…、大人のための"英語との向き合い方"です。
50歳まで苦手だった英語
そうも言っていられない環境の変化
僕は50歳になる今まで、ずっと英語が苦手でした。
とくに英会話なんて本当に苦手で、どこかから英語が聞こえてくるだけで、何とも言えず居心地が悪くて仕方なかった。数年前までは「誰だ、英語を話しているのは。こっちに来ないで欲しい!」と避けたくなるのが僕でした。
参考までに、試しにTOEICを受けたのですが(ご存じかとは思いますが、TOEICとは英語によるコミュニケーション能力を幅広く評価する世界共通のテストで、聞き取りや読解を中心に能力を点数化するものです)、結果は通常会話で最低限のコミュニケーションが取れるというレベルだそうで、この点数を聞いて周囲は、「英語は専門外とはいえ、教育の専門家として、その点数はちょっと……」と言わんばかりに苦笑いしていました。
しかし、この数年で僕の気持ちは突如変わりました。きっかけは仕事の環境の大きな変化でした。
僕はそもそも小学校の一教師でした。今から8年前、現場で十数年教師をしながら確立した『陰山メソッド』という教育方法が一冊の本を通じて脚光を浴び、そこから一気に、劇的に仕事の環境が変化しました。
例えばそのメソッドのひとつである『百ます計算』がドリルになって発売されると、教育界で大きな反響を呼びました。そしてこれが国内にとどまらず、ついには昨年3月、ヨーロッパのフランス語圏でも発売されました。また最近ではアメリカのIT会社から、学習ソフトの開発の話を持ちかけられたりもしています。小学校の一教師だった頃の僕の想像、いや、夢をもはるかに超えるような、グローバルな仕事内容になったのです。
もともと話すことは好きですから、日本国内で自分のメソッドを語るには何の不都合もありません。興味を持っていただけた人からの疑問や質問、ときには反論などにも臨機応変に答えられますし、具体例やデータだって頭の中にたくさんストックしています。それが日本語でなら、いつでもどこでも説明できる自信があります。
しかし、これが海外の人へとなると、途端にもどかしくなってしまいます。問題は言葉です。しかも、外国人と会う時はそのほとんどが英語です。だからその度に通訳を介して考えを話さなければいけない。自分では相手にダイレクトに何も話せないし、質問も聞けないのです。やりとりに時間もかかるし、非常に不便です。
何とかならないものだろうか、自分が自分の言葉で自分のメソッドを紹介したいのに。でも英語は苦手だし、話してみたところで、僕の英語なんかじゃきっと分かってもらえないに違いない。毎回そんなもやもやとした思いでいっぱいでした。
そして数年前には、自分の英語力の無さを痛感させられ、同時に、もはや英語は誰でも話せて当たり前というアジアの現状を、いやというほど実感する経験をしたのです。
それはこんな体験でした。