インベストメントバンカー M&A請負人の正体#7Photo:PIXTA

投資銀行業務は、もはやメガバンクや大手証券の独壇場ではない。地方銀行の雄・横浜銀行は、欧州の外資系証券から専門チームを招聘し、大手の手が届かない「空白地帯」の中堅企業へ攻勢をかける。長期連載『金融インサイド』内の特集『インベストメントバンカー M&A請負人の正体』の#7では、年収数千万円の「プロ人財制度」を武器に、時価総額1000億円未満の企業から「投資銀行難民」を救う横浜銀行の狙いに迫る。(ダイヤモンド編集部 高野 豪)

ゼロベースから専門チームを組成
外資の知見を生かす「プロ人財」の合流

 2019年春、横浜銀行は法人先で高度化・複雑化する課題への解決に注力する観点から、法人営業部を「ソリューション営業部」に改称した。それとほぼ同時に部内で立ち上げたのが、「投資銀行チーム」だ。

 ゼロベースからチームを立ち上げるには、「ノウハウや人脈が相当必要だった」。投資銀行チームを総括する小柴裕太郎副頭取執行役員営業本部長は、当時をそう振り返る。

 そのため地方銀行では異例の体制整備を断行した。欧州の大手外資系証券で投資銀行業務を手掛けた人材を招聘。小柴氏は「お客さまとしっかりリレーションを築く横浜銀行が、自分たちの力を発揮できる場だと判断してもらえたのだろう」と、採用に至った理由を明かす。

 だが、そもそも外資系証券から地銀に転職する人材は多くない。その大きな理由が報酬だ。そこで同行は、前職と見劣りしないよう、一般行員と報酬体系が異なる「プロ人財制度」を外資系出身者に適用。毎年報酬を定め、実績などに応じて賞与で報いる形を取る。年収は数千万円とみられる。

 現在は外資系証券出身の4人が在籍し、チームを主導する役割を担う。注力するのが、取引先の上場企業に対する資本政策の提案だ。東京証券取引所の上場企業の約3分の1を占める取引先1200社のうち、優先度の高い順にアプローチを始めた。

 実績も積み上げている。企業が銀行借り入れなどで対象企業を買収するLBO(レバレッジド・バイアウト)の残高は25年9月末で70件・約4500億円。劣後特約付きローンの残高も、同月末で39件・約2300億円と堅調に推移する。

 今、同行が狙いを定めているのは、メガバンク系や大手証券系の投資銀行が利益効率の観点から追わない、時価総額数十億~1000億円規模の「空白地帯」に眠る巨大市場だ。

「投資銀行難民」と化した中堅上場企業をいかにして取り込み、大手の牙城を崩そうとしているのか。次ページでは、同行が独自に構築した布陣の全貌と、2年で提案数を倍増させた秘伝のマトリクス、そしてプロのノウハウを「暗黙知」として吸収する人材育成術を明らかにする。