日本では今、英語は道具なのだから通じればいいじゃないか、日本人なのだから日本語訛りでいいじゃないかという「アジアン英語」「グロービッシュ」がブームです。英語が苦手な人の多い日本では、そのような本がたくさん売れる傾向があります。しかし、ダマされないでください。それは世界でまったく通用しません。

 言語は人と人とのコミュニケーションツールです。話し手と聞き手の間で「音」の交換がなされることによってコミュニケーションが成立するのです。音がメッセージを伝達するのです。メッセージには伝えたい内容だけでなく、話す人がどんな人物なのか、この人は信用できるのかなどの付随的な情報も伝達されます。

 心理学のメラビアンの法則によれば、人が物事を判断する上で参考にするのは、見た目が55%、話し方や態度が38%、話す内容が7%と言われています。通常、この法則はいかに見た目が重要かという意味で引用されますが、話し方も約4割を占めていることに注目してください。

 日本語におけるコミュニケーションでもまったく同じはずです。どれだけもっともなことを話していても、話し方がたどたどしい人のことは簡単には信用できないでしょう。そういう人をビジネスパートナーとして選ぶでしょうか。

 これは一見、すごくハードルの高いことを言っているように聞こえるかもしれませんが、世界のビジネスシーンにおける厳然たる事実です。通じればいいと思ってめちゃくちゃな文法、発音で話す日本人と向き合ったネイティブが、「あ、この人英語話せないな」と顔色が変わる瞬間を、私はこれまで何度も見てきました。ゆっくり話されている時点で、もはや対等ではないのです。